マツダCX-5

公開 : 2013.08.09 14:15  更新 : 2017.05.22 13:58

ディーゼルの先兵、CX-5を導入

先月号のミニ・クーパー・クロスオーバーに続き、新たに、編集部の長期レポート車としてマツダのCX-5を導入した。CX-5はマツダの社運を賭けたSUVで、今年の3月に新発売されたが、その販売は絶好調で、発売からすでに4ヵ月が過ぎた現在でもバック・オーダーが処理しきれないという。しかも、その内、ディーゼル仕様が7割を占める、というから驚きだ。これまでの国内のマーケットの販売状況からすれば、これほどまでにディーゼルが受け入れられるとは誰も予想できなかった訳で、その意味でも画期的なクルマであると言える。おそらく、今後は200〜300万円台でディーゼル・エンジン車が増えてくるものと考えられる。

編集部で導入したのも、無論、ディーゼル仕様である。ボディ・カラーはいわゆる煉瓦色で、正式名称はジール・レッド・マイカと呼ばれる。CX-5は大きく、2輪駆動、4輪駆動、ディーゼル、ガソリンに分かれるが、編集部に来たのは、FFの2輪駆動で、車輛本体価格は、2,580,000円(税込)である。これにメーカー・オプションとして、デスチャージパッケージ80,000円、セ-フティクルーズパッケージ78750円、19インチタイヤ/ホィール52500円が付き、更にショップオプションとしてメモリーナビゲーション・システム186,000円が追加され、〆て2,977,250円(税込)となっている。これらのオプションは、もちろん便利だが、特にどうしても必要というわけではないと思う。

ボディサイズは全長4540mm、全福1840mm、全高1705mmでSUVとしては、丁度良い扱いやすいサイズである。

実際に編集部にクルマがやってきたのは、6月12日で、それから、ほぼ毎日、通勤から、レジャーまで、全てに使用している。インプレッションについては既に6月号で行っているが、実際に毎日乗るようになるとまた違った意味での美点と要改良点が浮かび上がってくる。シートは、ホールドは悪くないのだが、試乗の際にも感じたとおり、背もたれの角度の調節が中途半端で丁度良い位置が選べない。これは慣れれば良いのだろうがしっくりしないのは事実だ。他の部分では、ペダル類の配置やステアリング系の取り回しも含めて、何の不都合もない。エンジンは、アイドリングこそ、ディーゼル特有のカラカラという音色を奏でるが、一旦アクセルを踏み込めば、ディーゼルという感触はほぼゼロと言っても差支えないほどのフィーリングだ。加速のピックアップは非常に良く、燃費を気にしなければ、常に流れをリードすることは容易だ。ただし、自慢のアイドリング・ストップは、ブレーキ・ペダルをかなり踏み込まなくてはならず、ついつい忘れてしまいがちになるのは困ったものである。しかも、再スタートの際のボディのゆれは意外に大きいと思う。

サスペンションは基本的に硬めで、特に高速道路の路面のギャップでは、直接かなりのショックを体感する。しかし、この感触は悪い訳ではなく、スピードを上げるに従って、乗り心地は向上するので、このサスペンションはむしろ、高速で巡航することが多い、欧州向けに相応しいようにも感じる。

最も、興味のある燃費については、この一ヶ月の間に1,632kmを走り、3回の給油を行っている。走行パターンは、首都高を使った通勤が毎日往復50km程度、この他、都内の移動と、取材で箱根、山中湖にも出向いているから、私の場合の通常の使い方だったと思う。この間、合計137.4リッターの軽油を消費し、トータルの燃費は11.88km/ℓとなった。3回の給油のうち、最初の一回は、@128円で、後の2回が@122円なので、合計燃料費は17,037円である。これまで乗っていたメルセデスのCクラスでは、同じ走行距離でおそらく、リッター9km/ℓ弱のはずなので、ハイオクを使うことを考慮にいれれば、すでに約1万円ほどの節約となっている。

実際に、パネルに表示される燃費は、12km/ℓを割ることは無かったので、実数値の方がやや悪いが、ほぼ近似値ということだろう。この燃費をどう評価するかだが、このサイズのSUVとすれば、かなり良い数値だと思う。実際、都内で走る、プリウスのタクシーの運転手5人ほどに聞いてみても、ほぼ全員が燃費は16km/ℓぐらいだ、と答えてくれている。それを考えれば、カタログ・データの18.6km/ℓから比較しても、まずまずだと考えて良いはずだ。それよりも気になるのは、エンジンをオフした後、ドライビングの状況を点数で評価されることで、ある意味では大きなお世話なのかもしれないが、一応の目安にはなると思う。私の場合、意識せずに運転した時の方が良い点数がでるようだ。

一ヶ月乗ってみて、トラブルは殆ど無いが、助手席側のシートベルトのワーニングがジャケット程度で反応してしまうことが偶にある。この程度だと、ディーラーに持ってゆく気にもなれず、いささか鬱陶しい。

全体として、このCX-5はとても良くできたクルマだと思う。良く走るし、使い勝手もよく、飽きずに長く使えるクルマだと断言できる。次第にこのCX-5に愛着が湧いてきつつあるこの頃だが、そろそろ、ミニ・クロスオーバーとの交換時期となりそうだ。

(AUTOCAR No.112 2012年7月26日発売号掲載)

速いぞ! ディーゼル

先月、CX-5をミニと交換する予定だったが、丁度、豊橋までの往復をする機会があったので、それにあわせて、もう一回、レポートを担当することにした。主に都内の移動と通勤のみであった先月と違い、今月は多様な走り方が出来たと思う。今回の総走行距離は2258kmで、この間、180.57リッターの軽油を消費し、平均燃費は12.5km/ℓとなった。これは前回の11.88km/ℓよりはかなり良い数値である。リッター当たりの軽油価格は、一番安い107円から125円までかなり幅があったが、トータルで21930円を支払っている。一般的に言って、このCX-5でガソリンスタンドに入った場合、軽油といっただけでエッと驚くケースが殆どであった。

今月、最も印象に残ったのは、何と言っても豊橋往復の体験だろう。新東名を一気に走ったのは始めてであったが、コーナーの曲率も大きく非常に走りやすいので、つい、アクセルを踏み込みすぎ、いつの間にか、とても大きな声では言えないようなスピードになってしまっていることが何回かあった。CX-5の加速は非常にスムーズで高速でも安定しているから、余程気をつけないと免許証にとって危険である。風切り音は少なく、エンジン音も大きくないので、走っている分には、ディーゼルと認識することは難しく、むしろ、トルクの厚さの美点のほうがクローズアップされてくる。発進加速も追い越し加速もアクセルワークに素直に反応して、一気にダッシュしてくれるので申し分ない。そして、一番嬉しいのは、かなり飛ばしたにも係わらず、燃費が悪化しなかったことである。

その一方で、シートにはやや不満がでてきた。左右のホールドは長距離を走るには充分ではなく、背もたれの角度もやはりしっくり来ない。この辺りは要改良だと思う。

今時のクルマは、真夏の走行でも何の問題も無いのが当然だが、エアコンの効きも良く、炎天下に停めておいても比較的早く快適な空間が得られる。また、バックモニターは判りやすく、かなりタイトなスペースでも、比較的安全に収めることができる。

このクルマの特徴のひとつとして、エンジンを停止した後、5点満点でドライビングの評価点がでてくる。ある意味、大きなお世話かもしれないが、次第にこの点数が気になってくるのも事実だ。私の場合、酷いときには1点台、最高に良いときにはたった1回だが5点満点が出たことがある。通常、良くても4.7点ほどであったからいささか驚いたが、ゲーム感覚で面白いと思う。

CX-5は相変わらず好調な売れ行きで、今やマツダの主力車種に育っている。現在でも、販売台数の7割はディーゼルだというから、国内では、エコカーと言えばハイブリッドと同義語だと信じ込んでいる人たちばかりかと思っていた我々も、見直さざるを得ないことになった。無論、この事態に他のメーカーが手を拱いているはずは無く、おそらく、この秋からは多くのライバルが登場してくるに違いない。しかし、先駆者としての立場は圧倒的に有利で、大胆な決断に対しての果実は大きいものがあると思う。

前号のボッシュ大研究にも記載させて頂いたが、ヨーロッパでは、圧倒的にディーゼルがマーケット・シェアを握っている。日本でも、今後シェアが増加するのは間違いないところだ。

(AUTOCAR No.113 2012年8月25日発売号掲載)

ショップオーナーに聞きました

今月のCX-5のレポートは、最終回ということで、これまでと趣向を変え、当社のWebサイトのスペシャルショップ・ナビに参加して頂いているショップのオーナーの皆様の感想を聞いてみた。以下はその代表例である。

初めまして、広告の斉藤です。さて私は普段の生業は弊誌オートカージャパンの広告のセールスマンでございます。ですから編集部員の様に最新のクルマに日頃触れていると言う訳ではありません。どちらかというとちょっと古めのサイズの小さなクルマで日々動いている訳なんですね。

昨今の奥様達がミニバンという巨体を軽々と乗り回していらっしゃるのを畏怖の目で見ている位なんです。そこでCX-5、全幅1830㎜と自分にとっては堂々とした体躯。当然気持ちが重くなるのも無理はありません。星賀副編からは「全然大丈夫ですよ」と言われてみたものの重い気持ちの乗り込む訳で、しかしとても見晴らしが良い。あら、なにこれ、四隅が掴みやすいかもしれない。しかも左前方をバックミラーに映し出すカメラまで付いているではありませんか! なんというハイテク。もうだいじょぶ!という根拠のない自信が出てきました。このクルマ、実は取り回し易いんですね。さて私の試乗記と行きたいところですが折角セールスマンという職業がらを生かした「プロの生の声」を皆さんにお伝えすることに致します。日々様々な輸入車の整備板金販売を行っているスペシャルショップさんにお伺いするのが業務の基本。そこで「せっかくだからその道のプロに話題のCX-5について伺ってみよう」という編集長からの使命を受け、日々の仕事の傍らにショップの社長さんにCX-5に試乗して頂いて貰う事にしました。

さて、今回は主にドイツ系の販売整備を行う狛江のT自動車の社長に乗って頂きました。勿論齋藤も隣に座っての同乗試乗です。走り出した社長さん曰く「これは凄いトルクだね。いや4.5ℓ位は有りそう」とやっぱり2.2ℓスカイアクティブディーゼルの印象は強烈の様です。すると社長いつもの慣れたコースで「行きますよ」アクセルを床まで踏みつけます。「うん、これは上でのパンチも有ってドイツ車のガソリンターボの様な炸裂感もあるわ!」との感想。予想を上回る官能的な感想を貰いました。

いきなりアクセル全開はビックリしますよ。さあゆっくりとした市街地に差し掛かりました。勿論法定速度で走る社長さんですが小刻みに頷きながら何かを確認しているようです。「このクルマは足回りが割と固い設定だと思いますが、路面の荒れている所も19インチを履いているのにバタつきが少ないなァ。ハンドルを素早く切り返した時の揺り返しも無いですし、全体の動きがピシッと締まってるんですよね。結構大きい車体なのにこの感触は凄いなァ」と本気で関心している様子です。私も何故か得意げになってしまい「これでいくらだと思います?」と聞いてみると「330万位?」と聞いて来ました。「このOP込の仕様でも300万以下ですよ」と言ったところどうなったでしょうか!?「齋藤君、うちはドイツ車だけを売っている訳では無くて、安心してお客さんに勧められる車を僕自身が探して居るんだよ。よし、これなら自信を持ってうちのお客さんにも進められるよ」という事になってしまいました。

ドイツ車のプロに言わせたこの台詞。一番説得力があるのではと僕は思ったのでした。

(AUTOCAR No.114 2012年9月26日発売号掲載)

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