【世界初のDOHC量産マシン】フランスが生んだサルムソンGS8ロードスター 後編

公開 : 2020.03.01 16:50  更新 : 2020.12.08 10:55

世界で初めて、ツインカム・エンジンとレースカー仕様をベースとしたシャシーが組み合わされた量産モデルが、サルムソンGS8ロードスター。今はなきフランスのメーカーが戦前に生み出した、貴重な1台を振り返ります。

世界初の量産ツインカムエンジン

text:Greg Macleman(グレッグ・マクレマン)
photo:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
ツインカム・エンジンを搭載したサルムソンGS(グランドスポーツ)8は、工場で求められたコストカットの影響を受けることはなかった。サルムソンの既存部品として採用されたのは、ワイヤースポークのホイールと、やや旧式な社内製3速トランスミッションだけだ。

何よりドライバーを喜ばせたのが、中央ヒンジで開くボンネットに隠されている。世界初の量産ツインカムエンジンだ。

サルムソンGS8ロードスター(1927年)
サルムソンGS8ロードスター(1927年)

1921年のスイス・シックス・デイズ・トライアルレースにタイプALが参戦すると、サルムソンの小排気量・高効率なエンジンには改良が加えられた。プチは従来式だったプッシュロッド4気筒エンジンを再設計する。

バルブは1気筒あたり給排気それぞれ2本を用意し、2本のオーバーヘッドカムで駆動。ボルトオンでエンジンのフロント部分へ追加されたハウジング内に、ベベルギアと垂直方向のシャフトを内蔵し、カムを回した。また、新しいクランクシャフトも採用された。

ツインカムのシリンダーヘッドは、1921年のル・マンで開催されたIIIグランプリ・ドlUMFサイクルカー・レースに向けて、さらに改良が加えられる。インテークポートは3ポートへ改められ、2基のクローデル・ホブソン社製キャブレターを装備した。

プッシュロッド時代のフライホイールとコーンクラッチはそのままだった。だが、プチはこのエンジンの改良をわずかに4週間で仕上げている。

ル・マンでは大きな差を付けて優勝

サルテ・サーキットでの初戦では、トラブルがなかったわけではない。練習走行中にトランスミッションは修理が必要となった。

車重計測の後には、リアアスクル・ケースの破損も発覚した。サルムソンは、念のために2台体制を敷いていた。

サルムソンGS8ロードスター(1927年)
サルムソンGS8ロードスター(1927年)

部品はすぐにサルテサーキットへ届くが、レースクルーはゆったりと夕食をとったため作業は中断。残されたプチは、レースに向けて一晩中準備をすることになった。

アンドレ・ロンバードはスタートすると直ぐに速さを見せ、5周目にはトップに立つ。だが残り3週というところで、燃料切れになり、アルナージュ・コーナーで停まってしまう。

20分の差をつけてリードしていたが、そのトラブルで5分にまで縮まった。だがロンバードは盛り返し、18分差をつけて優勝した。

サルムソンのマシンは、310kmの総距離を平均速度87.8km/hで走破。オーバーヘッド・ツインカムエンジンは、トップの速さを見せつけたのだった。当時のAUTOCARでも、初参戦のサルムソンの圧倒的な勝利を報じている。

ツインカム・エンジンの実験的マシンは、タラゴナで開かれたレースの大事故に巻き込まれる。一方でより手頃なツインカムエンジンの開発も行われ、サルムソンDタイプに搭載された。

ワークスエンジンは、複雑なボールベアリング・クランクシャフトを用い続けた。グランドスポーツ・スペシャルのトップラインとして、重要な役目を果たした。

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