【グッドウッド雪上版?】GPアイスレース あまりにも見事な非現実世界

公開 : 2020.03.22 18:50  更新 : 2020.03.22 20:25

復活の立役者 ポルシェ博士のひ孫

GPアイスレースにもグッドウッドにおけるリッチモンド公爵のような人物がいる。

フェルディナント・ポルシェ博士のひ孫、フェルディナンド・オリバー・ポルシェがその人だ。

雪や氷のうえでそれなりのトラクション性能を得るには金属製スタッドが必要だ。
雪や氷のうえでそれなりのトラクション性能を得るには金属製スタッドが必要だ。

彼がこのイベントを「歴史の闇」から復活させたのは、ますます高まるヒストリックカーイベントに対する需要と、「ツェル・アム・ゼーが誇るモータースポーツの歴史」があったからだと言う。

いまやグッドウッドが大規模で誰もが楽しめるイベントとなっている一方、はるかに小規模なGPアイスレースは、無秩序な楽しみと混乱の瀬戸際で、なんとかバランスを保っているように見える(ほんの一例だが、メディアセンターはバスルームの展示室に置かれている)。

比較的気温が高く、主催者たちは氷のコース(距離が短く三角形をしたややつまらないコースだ)が溶けて台無しになることを防ごうと必死だが、その結果、一部のスケジュールが変更され、もともとスムーズとは言えない運営がさらなる混乱に見舞われている。

だが、こうした点も、レースやデモ走行を行ったり、展示されている見事な車両を目すれば気にならなくだろう。

三菱ランサースコダ・ファビアR5、スバルインプレッサといった比較的新しいマシンが登場する一方、素晴らしく魅力的な歴史的名車のなかには911とフォルクスワーゲンビートルの一群、少数のサーブ96、ボルボのクラシックモデルや、台数は少ないがグループBを戦ったアウディ・クワトロなどが含まれている。

現実とは思えない世界

スティグ・ブロンクビストがフォーミュラEのマシンをドライブしているが、アウディは彼にクワトロS1のステアリングも委ねている。

さらに、3度のル・マン・チャンピオン、ブノワ・トレルイエには、1987年のスキー・スラローム王者であるフランク・ヴェルンドを、1955年製のDKW F91で牽引するという役割が与えられていた。

オリンピックのスラローム銀メダリストでもあるヴェルンドがDKWを追いかける
オリンピックのスラローム銀メダリストでもあるヴェルンドがDKWを追いかける

フォルクスワーゲンはヒルクライムレーサーからEVのショーケースへとその目的を変えたID Rの開発実験用車両、ゴルフeR1を公開しているが、同時にクラシックモデルの1302 Sと、タナー・ファウストがドライブする強力なラリークロス用マシンという、驚くべきビートルのペアを走行させている。

ファウストは「氷のサーキットでのドライビングも楽しめました」と話しているが、彼にとってこのイベントのハイライトははハンス=ヨアヒム・スタックとの出会いだったに違いない。

GPアイスレースではこうしたシーンを目にすることが出来るのだ。

確かに完ぺきには程遠い。

距離が短く幅の狭いコースはスペースが足りず、2万人ほど集まった観客もあまりレースを楽しめなかったに違いない。

現場にいてもいま何が起こっているのかを知るのが難しかったほどだ。

だが、同時にここでしか味わえないものもあった。

6つのスタッド付きタイヤを履いたF1マシンをハンス=ヨアヒム・スタックがドライブしたり、Nascarのストックレーサーが氷の上を走ったり、古いシボレーコルベットが凍結した滑走路をスライドするシーンなど、ここ以外では決して目にすることは出来ないだろう。

現実とは思えない?

確かに。あまりにも見事な非現実世界だ。

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