【2年では足りない?】ベントレー・コンティニュエーション・シリーズ 4.5リッター・ブロワー復活の裏側

公開 : 2020.06.13 08:50

12台限定で再生産されるもっとも有名なベントレー、4.5リッター・ブロワー復活の裏側を取材しました。現存するオリジナルモデルをベースに、最新技術とベテランの技を融合すればさほど困難ではないと思われたこのプロジェクトですが、実態は大きく異なるようです。

お値段150万ポンド以上

ベントレーの「コンティニュエーション・シリーズ」が生み出す、1929年製モデルを模した12台限定の4.5リッター・ブロワーを手に入れるため、150万ポンド(2億1180万円)以上の金額を支払ったとしよう。

すでに支払いは済ませたものの、まだ2年間にも及ぶ製作期間の4カ月が経過したところであり、実際に目にすることの出来るものなど影も形もない。

ベントレー・ブロワー復活の裏側
ベントレー・ブロワー復活の裏側

だが、今年後半にはベントレーのビスポーク専門部隊、ミュリナーからいくつかの仕様に関する照会が行われる予定であり、そのなかには奇妙だが重要な選択が含まれることになる。

このクルマでは、ヘンリー’ティム’バーキン卿が創り出した4台の特別なレーシング・ブロワーの1台が、リバースエンジニアリングによって完ぺきに再現されることになる。

戦前に活躍したもっとも偉大なベントレー・ボーイズのひとり、バーキン卿は、50台が生産されたホモロゲーションモデルをもとに、レーシングチームの創設を託されたのだ。

すでにベントレーでは、この特別なプロジェクトに必要なデータを採取すべく、「 チーム・ブロワー」2号車の分解を始めており、もう直ぐメカニカルコンポーネントの組み立て作業が始まる予定だ。

では、ここで重要な質問だ。

自らの車両のフロアに、当時バーキン卿らが履いていたレーシングブーツの足跡を再現したいと思うだろうか?

それとも、真っ新な新品同様の状態がお好みだろうか?

もっとも有名なベントレー

どちらの要望にも対応可能であり、細部に渡って測定を行うデジタル技術を使うことで、お望みとあらば90年前、バーキン卿の情熱的なドライビングスタイルによって、アクセルペダルの横に出来たフロアの凹みまで再現することが出来る。

これは車両製作の進展に伴い、このクルマのオーナーが直面する数多くの選択のほんの一部でしかないが、もっとも歴史の重みを感じさせるものかも知れない。

オリジナル車両のすべてがデジタルデータとして保存される。
オリジナル車両のすべてがデジタルデータとして保存される。

多くが史上もっとも有名なベントレーだと見做すこの4.5リッター・ブロワーだが、かの有名なWOベントレーは必ずしもこのクルマに賛成ではなかった。

彼は速いモデルを創り出すにはエンジンの排気量を上げれば良いと考えていたのであり、確かに6.5リッター・スピードシックスは、ブロワーよりもはるかに優れた戦績を上げている。

だが、バーキンはこのスーパーチャージャー付きモデルを設計したアマースト・ヴィラーズと同じく、ブロワーのコンセプトを熱心に支持していた(スーパーチャージャーによってパワーは178psから243psへと引き上げられていた)。

彼はWOの反対を押し切る形で、経営難に陥っていたベントレーの会長を務めるとともに、バーキンの支持者でもあったウルフ・バーナートからの承認を得ることに成功している。

ベントレーでは50台のブロワーと、レース用として4台をバーキンのために製作しており、そのうちの1台がいまもベントレーが所有し、今回の写真に納まる2号車だ。

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