【EVの未来は暗くない】アウディEトロンS スポーツバック 試作車に試乗

公開 : 2020.03.01 10:20

システム総合で502psと99.0kg-mを獲得

コーナリング中には、内側のタイヤより外側のタイヤへ22.3kg-mも大きいトルクを与えることができる。クラッチを内蔵するスポーツデフの場合、内側と外側の差は10%だから、大きな差だ。

つまり、ドライバーは外側のリアタイヤへ強いトルクが送られる満足感を、いつでも得られるということ。理論的には、だが。フロントタイヤ側は一般的な仕様で、ブレーキ制御によるトルクベクタリング機能と同等だという。

アウディEトロンS スポーツバック・プロトタイプ
アウディEトロンS スポーツバック・プロトタイプ

3基のモーターをセンターユニットが統率し、スポーツLSDとトルセンデフの機能を電気的に再現している。しかも素早く正確な制御が、常に可能なのだ。アレック・イシゴニスも驚くに違いない。

システム全体の最高出力は、Eトロンの408psから502psへと向上。フロント側のモーターは、Eトロン55のリアモーターと同じ強力なものを採用した。リアは203psの小型モーターがサブフレーム内に2基、背中合わせに搭載され、総合での出力は359psとなるという。

システム総合での最大トルクは、驚きの99.0kg-m。そのうちリアタイヤ側のモーターが生むのは62.9kg-mとなる。

今回、このプロトタイプの試乗を許されたのは、ドイツ・ミュンヘン近郊にあるアウディの開発施設だった。ここは、アウディR8 LMS GT2やLMP1など、レーシングマシンのための場所。

初めてのシェイクダウンに備えて、コースを外れてもアスファルトと芝生の広ランオフエリアが用意してある。筆者にとってもありがたい。

希望通りのパワー・オーバーステア

アウディEトロンS スポーツバック・プロトタイプの車重は、ドライバーを含めなくても2500kg以上。3基の電気モーターが生むトルクが甚大とはいえ、軽い相手ではない。

静止状態からの加速は確かに鋭いが、それ以降はゴルフR並みの加速力といって良いだろう。何よりも印象的なのが、軽くペースを速めて走らせているときに感じる、微妙なリアタイヤ寄りのトルク配分にある。

アウディEトロンS スポーツバック・プロトタイプ
アウディEトロンS スポーツバック・プロトタイプ

ステアリングホイールを切り始めた瞬間から、フロントタイヤは前進させるよりも、ブレーキ制御でのトルクベクタリングの方へ軸足が移る。同時にリアタイヤ側は、2基のモーターによるトルクベクタリングが効き始める。

攻め気味にコーナーへ侵入すると、思わず驚いてしまった。フロントノーズをラインへ乗せれば、アウト側のリアタイヤに強いトルクが掛かっているおかげで、望めば応えるようにパワー・オーバーステアに持ち込めるからだ。

さらに驚くのが、リアタイヤの挙動が充分に予見できるところ。EトロンS スポーツバックの技術が、アウディTTのようなコンパクトで軽量なクルマに搭載される日が、待ち遠しく感じてしまう。

ただし、滑らかながら淡白なステアリングフィールも、ブレーキペダルの感触も、特に自信を掻き立ててくれるわけではなかった。

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