ロードテスト ロールス・ロイス・カリナン ★★★★★★★★☆☆

公開 : 2020.03.01 11:50  更新 : 2020.03.08 03:15

ロールスのSUVが、満を持してロードテストに登場です。高級SUV市場においてもずば抜けて高額なカリナンは、たしかにロールスらしさをしっかり受け継いでいます。とてつもないパワーさえ、上品にしつけられていました。

はじめに

読者諸兄のお怒りはもっともだ。腹立たしいまでに大きく重いカリナンも、SUVを渇望する市場への迎合といえるだろう。とはいえ先例をみる限り、超プレミアムブランドの世界では、いかなる強豪よりもロールス・ロイスが確固たる地位を築いている。

1914年から、シルバーゴーストのシャシーがベースの装甲車は、ヴィッカーズの303口径水冷マシンガンを積み、第一次大戦へ出征。12両を1個中隊として、欧州戦線のみ成らず、中東にまで配備された。

かのアラビアのロレンスことT.E.ロレンスがオスマン帝国軍に勝利した際にも活躍。7.5Lエンジンを積む、お世辞にも美しいとはいえないその4.7tのマシンを、彼は「ルビーよりも価値がある」と評した。その後もさまざまなかたちで、戦うロールスは1941年まで戦地を駆け回り続けた。

創業からこの参戦に至る間にも、ロールス・ロイスのクルマはしばしば、今でいうところのSUV的な使われ方をされてきた。ラグジュアリーで信頼性が高いことは当然とみなされたが、それを極端な悪路でも求められたのだ。

シューティングブレークタイプのボディを製作し、特権階級のオフロードアクティビティを自動車の面でサポートしたこともある。ハンティングに興じる欧州の上流階級は、地面との大きなクリアランスと広いキャビンを求めた。

また、とあるインドのマハラジャがオーダーした1925年型ファントムは、ハイトのあるタイヤを履かせ、サーチライトを据え付け、リアバンパーに象撃ちライフルを積めるようにしたものだった。

たしかに、いまのロールスもそうした注文を受ける場合はあるが、喜んで受注しているとは思えない。しかし、それでも6.75Lエンジンを積む2.7tのカリナンはそうした実用重視の血統を、真に引き継ぐものだ。

たとえそうはいえないものだったとしても、経営陣はSUVの投入を、自社にとって比べるもののない賢明な選択肢だと考えたに違いない。なんといっても、ベントレーではベンテイガの販売台数が他モデルの合計をたちまち上回り、ランボルギーニウルスの投入初年度に出荷台数が倍増したのだ。

はたしてカリナンは、そうした目覚ましい成功を、至高の高級車ブランドにもたらすポテンシャルを秘めているのか。ロードテストによって明らかにしてみたい。

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