【まるでイタリアンレーサー?】JNSスペシャル 素晴らしきホームメイドマシン

公開 : 2020.03.21 18:50

去年の夏、ブランズハッチで魅了されたマシンの秘密を探るべくオーナーのガレージを訪ねました。かつて活躍したGPカーをモチーフにしたこのマシンの中味は、さまざまなクルマの寄せ集めですが、オーナーの情熱と工夫が創り上げた誇るべき存在です。

正体不明の見事なマシン

眼前に広がるのはまるでファンジオが目にしたような光景だ。

アルミニウム製フレームにセットされた一枚ガラス越しに、ほっそりとしたボンネットと剥き出しのスポークホイールが見える。

インテリアは安普請だが、ターボから解放されたゴルディーニエンジンは約112psという十分なパワーを発揮する。
インテリアは安普請だが、ターボから解放されたゴルディーニエンジンは約112psという十分なパワーを発揮する。

いま手にしているのは4本スポークのウッドステアリングであり、右側にあるのはずんぐりとしたシフトレバーだ。

そして、白文字盤のメーターがアルミニウム製パネルに設置されている。

非常にシンプルなマシンだ。

シングルシーターだが、肘を十分に動かすことのできるスペースも確保されている。

もう少しペダルが近ければと思うが、残念ながらこのクルマはオーナー専用のセッティングとなっており、シート位置を調整することは出来ない。

初めてこのクルマを見たのは、去年の夏ブランズハッチで行われたヴィンテージ・スポーツカークラブのミーティングだった。

ケンタゴン・パブ近くにあるショップの外に、他のキットカーとともに停められていた。

遠くからは、そのタマゴ型グリルのせいでアルファ・ロメオの159アルフェッタかと思った。

だが、近づいてナンバープレートや灯火類を確認すると、このマシンの正体が分からなくなったのだ。

それでも、素晴らしいマシンであることに違いはなく、幸い車両の前に置いてあった一枚の紙がすべてを明らかにしてくれた。

それによれば、これはジョン・ナッシュという人物が創り上げたスペシャルマシンであり、彼はケント・キット・カークラブのメンバーとしてこのクルマを展示していたのだ。

モチーフは戦前戦後のGPカー

このクルマのオーナーに会うため、レースをふたつも見逃している。

なぜ?

ナッシュ(左)はほとんどの作業を自らの手で行っている。
ナッシュ(左)はほとんどの作業を自らの手で行っている。

まず、ナッシュの見事なクラフトマンシップを称賛したいと思ったからだ。

長年キットカーやこうしたスペシャルなワンオフモデルを目にしてきたが、これほど見事な出来栄えを誇る1台を見たのは初めてだった。

そして、このJNSスペシャルの中味がどうなっているのかを知りたかった。

ジャガーのエンジンだろうか? それともアルファのツインカムだろうか?

何よりも、どうやったら6000ポンド(82万円)以下でこんな見事なルックスをしたマシンを創り上げることができたのか、その秘密をナッシュに確かめたかったのだ。

ようやく現れたナッシュは、5年以上の歳月を掛けてゼロからこのマシンを創り上げたこと、そして、戦前戦後のグランプリカーがモチーフになっていることを教えてくれた。

このクルマの制作費はわずか5750ポンド(79万円)だが、7000時間分の労力が費やされており、危うく離婚されそうになったと言う。

数か月後、ハイスにあるナッシュのガレージでJNSの隅々まで目にすることが出来たが、これは彼が設計した初めてのマシンではないと言う。

「非常によく似たスリーホイーラーを製作したことがあります」と彼は話す。

「ですが、かなりの数の友人が4輪の方がはるかに素晴らしくなるだろうといったのです。最初はこのスリーホイーラーを改造しようと思いましたが、直ぐにゼロから製作した方がより簡単なことに気が付いたのです」

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