【国内試乗】ベントレー・フライングスパー ミュルザンヌを上回る快適性/ダイナミクス

公開 : 2020.03.31 11:05  更新 : 2021.10.13 15:50

もの作りのベクトル、工業ではなく工芸

搭載されるW12気筒エンジンはベントレーではお馴染みの形式でありながら、ツイン・インジェクター化や気筒休止技術などテクノロジーで構築された最新世代のもので、燃費やエミッションにも最大限の配慮を払いながらも最高出力は635ps、最大トルクは91.7kg-mを発揮する。

組み合わせられるトランスミッションはこの世代から採用された8速DCTだ。

使用されるレザーは350ピースに分割され、縫い上げるにはシートで12時間、ステアリングで3時間半を要するという。
使用されるレザーは350ピースに分割され、縫い上げるにはシートで12時間、ステアリングで3時間半を要するという。    田村 翔

ドライブトレインも従来のトルセン式フルタイム4WDではなく、電子制御多板クラッチをセンターデフとするアクティブオンデマンド4WDに刷新、通常時はほぼ0:100のFRに近い状態で駆動し、走行状態やドライブモードの設定に応じて最大で38%の駆動力を前輪に配分する。

ちなみに0-100km/h加速は3.8秒、最高速は333Km/hと、この動力性能は2ドアクーペのコンチネンタルGTシリーズとほぼ同等だ。

内装の仕立てはコンチネンタルGTに準ずるもので、ベントレー自らが史上最も複雑な工程を経て仕上げられるとされている。

使用されるレザーは350ピースに分割され、縫い上げるにはシートで12時間、ステアリングで3時間半を要するなど、手芸感を強調する数字が並ぶ。

そのオーラはやはり只者ではない。

単に革巻きにするというだけでなく、より豪華に斬新に見せる加工に拘る一方で、ダッシュボードやセンターコンソールなどの基本意匠も一枚革の質感を最大限に活かせるプレーンな形状となっている辺りは、彼らのもの作りのベクトルが工業ではなく工芸であることを物語っている。

従来と大きく異なるのは日常的な速度域

新しいフライングスパーが先代と最も大きく異なるのは、高速域の云々よりむしろ日常的な速度域での乗り心地かもしれない。

新たに採用された3つのチャンバーを持つエアボリュームの大きなサスのおかげもあって、ゴツゴツやザラザラが徹底的に廃されたタウンスピードでの滑らかさは、スポーツブランドゆえの割り切りも感じられた今までのベントレーのイメージとは一線を画している。

上質感という点では足を引っ張りがちなDCTもスロットルとの連携は完璧で、試乗中、がさつなフィードバックは一切感じることはなかったと筆者。
上質感という点では足を引っ張りがちなDCTもスロットルとの連携は完璧で、試乗中、がさつなフィードバックは一切感じることはなかったと筆者。    田村 翔

中高速域に向かうにつれてぐんぐんとフラットさを高めていくライドフィールは先代同様だが、その域での音や振動の要素もしっかり整理されており、雑味なく心地よい走行実感がドライバーにもたらされる。

何より、ステアリングやブレーキといった操作系の触感がより洗練されて繊細なフィードバックが得られるようになったことで、いいもの感は一層引き上げられた。

上質感という点では足を引っ張りがちなDCTもスロットルとの連携は完璧で、試乗中、がさつなフィードバックは一切感じることはなかった。

後軸側の駆動力を主体としてFR的な旋回特性を狙ったこともあって、このクルマの運動性能はその巨体をまったく感じさせない軽快なものだ。

アンチロールバーの反発力をアクチュエーターで可変させるだけでなく、その摺動を回生エネルギー化するベントレーダイナミックライドシステム、そしてベントレーでは初採用となる4WSの効果はドライブモードで統合制御される。

スポーツやコンフォートを選ぶでもなく負荷に応じてアダプティブに応答するBモードに入れておきさえすれば、まったく不満なく全域で自然かつ最善なレスポンスを示してくれる。

その全能ぶりにはちょっと唖然とさせられるほどだ。

130mm長くなったホイールベースの大半が費やされ、足元はミュルザンヌと同等以上に広くなった後席に収まるも、それから10分もすれば再びステアリングを握りたくなるのはまさにベントレーの血筋ということだろう。

新しいフライングスパーには確かにミュルザンヌほどの工芸感は望めない。が、ミュルザンヌを上回る快適性、そしてダイナミクスを備えていることも間違いない。

記事に関わった人々

  • 田村翔

    Sho Tamura

    1990年生まれ。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業後、2013〜2020年までアフロスポーツのメンバーとして活動。2020年よりフリーに転向。光と影を生かしながらレーシングカーやアスリートの「美」と、報道的かつ芸術性を追求した表現を目指し、モータースポーツと国内外のスポーツ競技を撮影する。日本レース写真家協会(JRPA)会員/日本スポーツ写真協会(JSPA)会員。

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