【フォードからロールス・ロイスまで】芸術的な英国のクラシック霊柩車 前編

公開 : 2020.05.10 07:20  更新 : 2020.12.08 11:04

使われなくなったオースチンやフォード、シボレー、ロールス・ロイスをもとに、コーチビルダーが生み出した新たな生命。優れた経験と技術で、芸術的にすら感じる霊柩車として生まれ変わった、クラシックな5台をご紹介します。

もくじ

霊柩車として命拾いしたクラシック
オリジナルの形状をうまく残したボディ
サイドガラスを外すとルーフが重さで陥没
V6エンジンとATで走りはスムーズ

霊柩車として命拾いしたクラシック

text:Andrew Robrts(アンドリュー・ロバーツ)
photo:James Mann(ジェームズ・マン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
英国ロンドンの道を、エンジンを載せた霊柩車が走ったのは1906年。その5年前、コベントリーでは、改造されたデイムラーが棺をしずしずと運んでいた。英国では初めてとなる、自動車による霊柩車だ。

英国では多くの古いコンバージョン・モデルが現存するが、大切に使われている霊柩車も、過去の世界を覗かせてくれる。

フォード・コンサル・コルチナMkI デラックス(1963年)
フォード・コンサル・コルチナMkI デラックス(1963年)

現役を退いたデイムラーやオースチンは、ダートコースでの激しいぶつかり合いが見もののバンガーレースに駆り出された。1960年代のB級ホラー映画のように、上品とは呼べない戦いに巻き込まれた。

しかし一部のクルマは救われ、1993年に設立したクラシック・ハース・レジスターのコレクションになっている。ディーン・リーダーとサンドラ・ミッチェルが設立した自動車クラブで、主に1980年以前の霊柩車を対象としている。

英国で最大の、個人的な霊柩車コレクションを保有するほか、何冊かの本も出版する。このクラブと英国編集部の働きかけで、ハンプシャーの国立自動車博物館に、5台の芸術作品ともいえる霊柩車が所蔵されることにもなった。

今回登場いただいた、フォード・コンサル・コルチナMkIとコンサルGT、シボレー・カプリスは、ディーンとサンドラが保有する15台のコレクションの一部。コルチナは1963年製デラックスがベースで、アイルランドの葬儀社が所有していた。

オリジナルの形状をうまく残したボディ

「エステートのコルチナが発売される前に、オーダーされた車両です。典型的なアイルランド流のコンバージョンになっています」 ディーンが説明する。

ボディのコーチワークを担当したのは、地元で鈑金塗装のガレージを営んでいたパディ・ネーゲル。テールゲートに手が加えられ、リアドアは溶接で固定。棺を納めるため、長いルーフとサイドウインドウが作られた。

フォード・コンサル・コルチナMkI デラックス(1963年)
フォード・コンサル・コルチナMkI デラックス(1963年)

リアライトも高い位置に移動している。「ボディの曲線や独特なバンパーの形状を残した、良い仕上げが施されています」 と話すディーン。初代コルチナをベースにした理由は定かではないものの、姿は充分に美しいと思う。

運転席の狭さを考えると、葬儀社はオプションのコラムシフトを選ぶべきだった。前席は棺の長さに合わせて前方にスライドされ、ステアリングホイールはドライバーにかなり近い。

「このクルマに乗ると、背中が痛くなります」 走行性能は、良くいえば制限されている。つまり悪い。「ボディはふわふわとしていて、1200ccのエンジンなので、上り坂では力不足です」 サンドラが認める。

このコルチナをクラブが迎え入れたのは、3年ほど前。最後に霊柩車として使われたのが何年なのかは不明だが、道路税を最後に支払ったのは1983年のようだ。

アイルランドの葬儀社は、数十年もの間、クルマを現役として走らせることも珍しくなかった。「1940年代の霊柩車が、1970年代や1980年代でも走っている姿を見てきました。特に地方では」 と話すサンドラ。

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