【甘美なハンドリングマシンをお手頃に】ポルシェ968 英国版中古車ガイド

公開 : 2020.05.21 10:20  更新 : 2021.07.12 18:46

ドライバーを満足させるシャシーを備えつつ、利便性も確保されたグランドツアラーといえるのが、ポルシェ968。今でもコアなファンの人気は絶えません。レアなFRポルシェを選ぶ際の注意点を、英国編集部が解説します。

快適で日常的に乗れるグランドツアラー

text:John Evans(ジョン・エバンス)
translation:KENJI Nakajima(中嶋健治)

 
1994年、AUTOCARはポルシェ968クラブスポーツを高く評価した。装備品を省略して50kgの減量化を図り、シャシーは標準の968より引き締められたていた。甘美なハンドリングマシンだった。

当時は長期テスト車として、数ヶ月を掛けてじっくり試乗したが、返却の日が残念でならなかった。そんな素敵なポルシェ968クラブスポーツ(CS)を、今なら幸運にも3万ポンド(399万円)以下で購入できる。

ポルシェ968(英国仕様)
ポルシェ968(英国仕様)

968のベースは、先代に当たるポルシェ944。924から続く、フロントエンジン・リアドライブのプラットフォームを用い、1992年に登場した。

ポルシェは当初、944 S3として開発を進めていた。だが、944とはだいぶ異なるモデルへ進化すると判断し、968の車名が与えられた。事実、944 S2と968とで共有する部品は、20%程度しかない。

1992年に発売された968には、2+2のクーペと、2シーターのコンバーチブルがラインナップ。エンジンはアルミニウム製の3.0L 4気筒で、6速MTを介して後輪を駆動する。

ポルシェ製のヴァリオカムと呼ばれる可変バルブタイミング機構と、モトロニック・フュエル・インジェクションを採用。最高出力240psを発生し、0-100km/h加速は6.5秒でこなした。

オプションでデュアルモード付きティプトロニックATも選べたが、0-100km/h加速は7.9秒へ落ちる。しかし968が追求したのは、直線性能ではなかった。

何よりも、快適で運転の楽しいグランドツアラーが目指された。日常的に使用できる、高い信頼性も備えている。もっとも、走行性能を磨いたクラブスポーツの場合、快適性は多少おろそかにはなっていたが。

近年は目にしていないと話す専門店も

1993年に登場した968CSには、電動ミラーとパワーウインドウ、集中ドアロック、リアハッチのリリースレーバーなどが備わらない。リアシートも省かれ、2シーターだ。フロントシートは軽量なレカロシートに置き換わり、着座位置は20mm下がっている。

CSは、サーキットではその真価を証明できたが、ショールームでは968の価値を存分に伝えることができなかった。売り上げは伸びなかったのだ。

ポルシェ968(英国仕様)
ポルシェ968(英国仕様)

軽量化された968は、ポルシェブランドに期待する一部のドライバーへは受けた。低く、軽く、走りに特化した968。週末のサーキット走行に完璧でありながら、平日の通勤でも充分快適に乗れる。

さらに968スポーツが、1994年の終わりに登場する。人気は今でも高く、一部では最高の968だと評価する人もいる。CSを買えない人の声が中心ではあるけれど。

すでに工場をラインオフしてから、一番新しいクルマでも25年が経っている。いま968を探すならグレードではなく、整備記録がしっかり残っている、メカニズムの調子が良くサビのない車両が良い。

まだ充分に魅力的な968が残っている。車両価格は、英国なら1万2000ポンド(159万円)から1万9000ポンド(252万円)の間くらいが良いだろう。価値も見直されており、しっかり整備を受けた968が、再び市場に増えつつある。

英国の中古車市場では、ポルシェ968の流通量はまだ少ない。日本も同様だ。英国のポルシェ専門店では、ここ数年間は968を目にしていない、と話す人も少なくなかった。

968は希少だが、ファンの間での評価も高い。興味があるなら、状態の良いクルマを発見したら、すぐに手を打った方が良いだろう。

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