【ディーゼル人気、過去のもの?】あっというまにプラグインハイブリッドが欧州で人気 なぜ?

公開 : 2020.06.26 05:50  更新 : 2021.10.09 23:05

電力を利用するEV、PHEV(プラグインハイブリッド)、HV(ハイブリッド)は、比較的堅調に推移しています。なかでもPHEVは大きく伸びています。ディーゼルの勢いが衰え、PHEV優勢の理由を探ります。

ディーゼル人気、過去のものに?

text:Toshimi Takehana(竹花寿実)

世界はまだまだ新型コロナウイルス感染拡大の影響が重くのしかかっている。

特に主要国で甚大な被害が出たヨーロッパは、自動車産業への影響が大きく、6月17日に欧州自動車工業界(ACEA)が発表した5月の欧州主要18か国の新車販売台数は、前年同月比57%減の55万8502台と大幅に落ち込んでいる。

欧州で大きなシェアを占める三菱アウトランダーPHEV。
欧州で大きなシェアを占める三菱アウトランダーPHEV。    三菱

これでも4月の80%減に比べれば回復傾向にはあるのだが、2020年は通年で前年の25%減になると予想されている。

そんな中でも、バッテリー式電気自動車=EVやPHEV(プラグインハイブリッド)、HV(ハイブリッド)といった電動車は、比較的堅調に推移している。

特にイギリスでは、4月にテスラモデル3が販売首位を獲得し、大きな注目を集めたのは記憶に新しいところだ。

とはいえこれは、新型コロナウイルスの影響でガソリン/ディーゼル車の生産がストップして、市場全体が縮小。そのなかで、2018年秋にPHEVに対する購入補助金制度が廃止され、補助金がEV中心へシフト。

さらにテスラ・モデル3の生産が昨年秋から本格的に軌道に乗り、今年に入って事前注文した顧客への納車が加速していることなど、イギリス国内とテスラの事情が絡んでいるのは否めない。

モデル3の首位獲得は、特殊な事例と見た方が良いのかもしれない。

ヨーロッパ全体で見ると、今年の第1四半期は、EVも確かに前年同期比68.4%と大きく伸びているが、実際にはPHEV(プラグインハイブリッド)が同161.7%増と、前年同期から2.6倍以上も増加している。

PHEV、自動車マーケットの主役に

ニュースとして目を引きやすいので、EVの販売台数&市場シェアの増加が大きく取り上げられているが、実際にはPHEVが今まさに自動車マーケットの主役に立とうとしていると言って良いだろう。

背景にあるのは、コンベンショナルな内燃エンジン(ICE)車、特に消費者のディーゼル車離れと、ヨーロッパ各国の電動車に対する補助金制度、充電インフラの不足、EVの航続距離と充電時間に対する消費者の懸念などがある。

2015年9月に発覚したフォルクスワーゲン・グループによるデフィートデバイスを用いたディーゼル車の排出ガス規制不正問題は「ディーゼル離れ」の一因に。
2015年9月に発覚したフォルクスワーゲン・グループによるデフィートデバイスを用いたディーゼル車の排出ガス規制不正問題は「ディーゼル離れ」の一因に。    AUTOCAR

ディーゼル車離れは、2015年9月に発覚したフォルクスワーゲン・グループによるデフィートデバイスを用いたディーゼル車の排出ガス規制不正問題を機に、各国でディーゼル車の排出ガスに対する規制が強化された。

また、欧州委員会の勧告により主に都市部へのEU4またはEU5以前のディーゼル車の流入規制などが実施されたことが大きな理由だ。

RDE(リアル・ドライビング・エミッション)テストを重視した最新の「EU6d-Temp EVAP-ISC」をクリアしたモデルなど、現在販売されているディーゼル車は、当面は問題無く使用できる。

だが、年々規制が厳しくなる状況に「ディーゼル車はいつ乗れなくなるか判らない」という不安が消費者の中に生まれ、まず中古車価格が暴落。こうなるとリセールバリューを気にする消費者はディーゼル車に手を出しにくくなり、ますます敬遠するようになる。

結果、かつては新車市場の過半数を占めていたディーゼル車の販売は大幅に落ち込んだ。

記事に関わった人々

  • 竹花寿実

    Toshimi Takehana

    1973年生まれ。自動車専門メディアの編集者やライターを経て、2010年春に渡独。現地でドイツ車とドイツの自動車社会を中心に取材、日本/中国/ドイツ語圏のメディアに寄稿。2018年夏に帰国、現在は東京を拠点に新型車や自動車業界、モビリティ全般について独自の視点で発信中。海外モーターショーの取材経験も豊富な国際派モータージャーナリスト。

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