【華やかに着飾ったカブリオレ】VWカルマン・ギアとルノー・フロリード 前編

公開 : 2020.07.11 07:20  更新 : 2020.12.08 11:04

シャシーにまで手の入ったカルマンギア

2台を並べると、数年の違いでデザインが変化したことがわかって面白い。カルマン・ギアのボディと一体になった美しいフェンダーラインは、フェンダーとランニングボードが別れたビートルのオーナーに、驚くほどモダンに写ったことだろう。

しかし急激に絞られるテール部分と、ずんぐりとしたノーズのフォルムは、戦後すぐのモダニズム・テイストを残す。しばらくして登場する、シャープなエッジを基調としたフロリードのフォルムとは明らかに違う。

フォルクスワーゲン・カルマン・ギア(1955年)
フォルクスワーゲン・カルマン・ギア(1955年)

ヘッドライトとエンブレムの3つの膨らみを持つフロントノーズは、スチュードベーカー・チャンピオンにも似ている。リアフェンダーのラインは、1953年のクライスラー・デレガンス・コンセプト風だ。

カルマン社のルイジ・セグレは、デレガンス・コンセプトのデザイナー、ヴァージル・エクスナーへ、お礼を込めてカルマン・ギアを贈ったとさえいわれている。

フォルクスワーゲン・ビートルをベースに、カルマン社が生み出したスタイリングには感銘するばかり。ボディを載せ替える以上の手間が、かけられている。

カルマン・ギアのシャシーは、ビートルのものより幅広く、長く、低い。フロントガラスは大きく寝かされ、細いピラーが浮き上がらせるように支える、カーブを描くバブルルーフが載っている。

ピラーが切り取られたカルマン・ギア・カブリオレが登場するのは、1957年。フランクフルト・モーターショーで発表され、カルマン社が製造を請け負った。ここにはギア社の関与はなかった。

忘れ去られたルノー・フロリード

カルマン社自らコンバーチブルへの変更を設計。荷室をわずかに削っているものの、ソフトトップの折り畳み機構を工夫し、リアシートは残された。ソフトトップは3層構造で、トップを閉じてもエレガントなプロポーションが保たれることも美点。

マイナスとしては、視界が僅かに狭まることと、プラスティック製のリアウインドウに傷が付きやすいことくらい。1969年にはガラス製になり、その心配もなくなっている。

ルノー・フロリードS(1959年)
ルノー・フロリードS(1959年)

今回登場願った、ダリル・コリアーがオーナーのカルマン・ギア・カブリオレも、ガラス製だ。オリオール・イエローが眩しい。コレクターでは人気の、小さなテールライトとバンパーの組み合わせが特徴。

1961年にフェイスリフトを受けており、ヘッドライトの位置は高く変更。ノーズ左右には、3本リブのエアインテークも付いた。多くの人がカルマン・ギアと聞いて、思い浮かべるスタイリングだと思う。

反面、ルノー・フロリードと聞いても、カタチを思い浮かべられる読者は少ないはず。年配の、一部のルノー・ファンくらいだろう。生産台数は12万台と少なくなかったが、現在では姿を見ること自体珍しい。

白いフロリードSのオーナー、トニー・ナピンはフロリードを忘れなかった。彼にとって3台目のフロリードで、10年以上所有している。1959年にフィアットからルノー・ドーフィンへと乗り換えて以来の、熱烈なルノー・ファン。他のメーカーのクルマを選んだことがないそうだ。

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