【最高速度400km/h超】マクラーレン・スピードテールへ試乗 1070psのハイパーGT 後編

公開 : 2020.07.20 10:20

伝説のマクラーレンF1の後継モデルにあたるのが、新しいスピードテールです。その刺激は、F1をはるかに超えるほどに絶頂。106台限定、最高出力1070psのハイパーGTへ、英国編集部がいち早く試乗しました。

乗り心地の良さは歴代最高の12C以上

text:Andrew Frankel(アンドリュー・フランケル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
マクラーレンP1とは異なり、マクラーレン・スピードテールのハイブリッドはエンジンのアシスト専門。P1のように、電気の力だけでは走れない。ケーブルをつないで充電もできない。

そのかわり、フロア面に内蔵された電磁誘導システムでの充電は可能だ。4億円のクルマのオーナーなら、自宅の車庫にそれくらいは付けられるだろう。電圧12Vの通常のバッテリーも、同時に管理してくれる。

マクラーレン・スピードテール(英国仕様)
マクラーレン・スピードテール(英国仕様)

スピードテールが720Sの14台分の印象を与えてくれるかといえば、そんなことはない。マクラーレン・セナほどの勇ましさもない。

乗り心地は素晴らしい。質感は最近のマクラーレンではなく、2011年の12Cに似ている。12Cには弱点もあったものの、マクラーレン史上でベストな乗り心地を備えていた。ただし、スピードテールの方がさらに良い。

ステアリング・ラックも、マクラーレンで共通するのもの。ホイールベースは58mm伸び、快適性や安定性を高め、ハイブリッド・システムをエンジンとトランスミッションの間に搭載している都合で、好ましい緩さがある。

比較的長い時間を、スピードテールで過ごした。中央のドライバーズシートに座り、マクラーレン720Sより1万8500ポンド(2億4790万円)も高い価値があるのか考えた。でも、時間とともにそんな悩みは消えてしまった。

いい尽くされた表現だが、スピードテールで得られる体験は、唯一無二。このクルマを買える余裕を持つ人にとっては、その特別さと希少性が、価格を正当化するのだろう。

ハイパーGTではなく、スーパーカー

長く乗るほどに、予想していなかった理由でスピードテールに気持ちが入っていく。初めは、ハイパーGTだと思って運転していたからだ。しかし違う。マクラーレンのV8エンジンは、そういう性格ではない。

先入観を捨てるのに、少し時間がかかってしまった。スピードテールは最先端の技術を満載したモデルだが、哲学的には1970年代に誕生したスーパーカーと似ているのだ。

マクラーレン・スピードテール(英国仕様)
マクラーレン・スピードテール(英国仕様)

現代版フェラーリ・デイトナとでもいえるだろうか。安楽で長距離移動も難しくない。何より前面にあるのは、ドライバーと、ドライビング体験なのだと気付いた。

それで、すべてが腑に落ちた。スピードテールは地平線目がけて疾走する、記憶に深く刻まれるマシンだ。

ハンドリングは素晴らしい。サーキット走行は想定していないから、マクラーレンはサスペンションを一般道向けに最適化している。英国の道とも、素晴らしい調和を見せてくれる。

車重は1499kgと軽量。ブガッティ・シロンより約500kgも軽い。飛ぶように走り、踊るように曲がる。美しい身のこなしで、ドライバーの意思に応えてくれる。

もしスピードテールの117.0kg-mというトルクを引き出したいなら、スポーツ・モードを選ぶ必要がある。しかもエンジンが高回転域に達しない限り、幅315もあるタイヤへ最大トルクは伝わらない。

つまり、スピードテールの真価を確かめるには、多くの人が一般道では経験したことのない速度域へ踏み入れなければならない。

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