【なぜ日本人、輸入商用車が好き?】カングーやベルランゴ 古くはアストロも 「わざわざ」選ぶ真の理由

公開 : 2020.07.25 05:50  更新 : 2023.01.23 13:43

みんなと同じじゃ、オシャレじゃない

90年代に入り、状況が一気に変わった。

トヨタエスティマ」の登場である。

それまでのバンやワンボックスカーなどの商用車イメージを完全に消した、まったく新しい発想のクルマだった。

このデザイン、トヨタの米国デザインスタジオのCalty(キャルティ)作だ。

ロサンゼルスの南部、オレンジカウンティ・ニューポートビーチのキャルティを何度か取材したことがあるが、正面玄関近くの展示スペースには、初代エスティマ・コンセプトの模型が誇らしげに飾られている。

トヨタとしては、エスティマを単なるワンボックカー後継とするのではなく、最近の流行で言うならモビリティというイメージの、万国共通の「未来の移動空間」を狙った。

エスティマは、瞬く間に日本中に広まる。

そうなると、逆に「みんなと同じじゃ……」と、エスティマに対する「逆張り」のトレンドが生まれることも、世の常として理解できる。

その代表格が、シボレーアストロ」だった。

芸能人らが日常の移動で重宝する様子を、自動車専門誌やバラエティーテレビ番組で紹介することで、短期間のうちに日本でのアストロブームが到来。

1ドル90円を切る超円高時代だったこともあり、アメリカやカナダから大量のアストロが日本に流れ、アストロ御殿を建てる業界関係者が続出した。

欧州商用車 あえて選ぶ真の理由は

そのアストロ、90年代当時、筆者は全米各地を巡る生活をしていたが、アメリカでアストロを乗用化する人は極めて少なかった。

あくまでも、日本の一部メディアなどが仕掛けた、日本特有のブームに過ぎない。

シトロエン・ベルランゴ
シトロエンベルランゴ    シトロエン

一方、最近のルノーカングーやシトロエン・ベルランゴのユーザーの愛車に対する考え方は、90年代のアストロとは大きく違う印象がある。

ユーザーは、ネットやSNSで本国フランスでのカングーやベルランゴの社会における位置付け、使われ方、そして現地価格も承知している。

そのうえで、「このデザインや、こうした使い勝手が好きだから」と自分自身の判断で購入を決めている、のだと思う。

彼らが日本にある数あるミニバンではなく、カングーやベルランゴをあえて選ぶ真の理由とは「欧州で多くの人に認められた、しっかりとした商用車だから」ではないだろうか。

日本ではミニバンが、軽からプレマミアムまで乗用化にこだわり過ぎているのかもしれない。

商用車としての軸足があり、フランスや欧州各国の人々の生活に根差している存在であること自体が、カングーやベルランゴの魅力なのだと思う。

どうやら日本のミニバン文化は、90年のエスティマ登場以来、約30年で再び大きな節目を迎えているようだ。

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