【完璧なレストア】ポルシェ930ターボ なぜ? 海外オークションで落札ならず

公開 : 2020.07.29 05:50  更新 : 2021.10.11 09:33

完璧にレストアされた「ポルシェ911ターボ(1975年)」がオークションに。世界一のコンディションと期待されましたが、入札は意外な結果に。初期型の特徴と、これまでの相場を、数々の写真で解説します。

永遠のスター、911ターボ

text:Kazuhide Ueno(上野和秀)
photo:RM Sotheby’s

特別なモデルが数多く存在するポルシェ911。そのヒストリーを語る上で欠かせない存在が、911ターボだ。

クルマ好きの間では、コードネームを用いて930ターボと呼ばれることが多い。

1975年ポルシェ930ターボ(シャシーナンバー:9305700065)。
1975年ポルシェ930ターボ(シャシーナンバー:9305700065)。    RM Sotheby’s

930ターボはカンナム・シリーズを制した「917/10 K」と「917/30KL」で得たターボ・テクノロジーを基に開発された。

ターボによる単なるパワーアップだけではなく、新たなフラッグシップとして豪華な高性能モデルと位置付けられたのが特徴である。

スタイリングはパワーを象徴するものとされ、ワイドなタイヤを収めるために120mm拡大されたリアフェンダーを始め、大型のリアスポイラーの採用によって強烈な印象に。1975年に発売されて以来、商業的にも大成功を収める。

日本では当時、スーパーカー・ブームの発端となるコミック「サーキットの狼」が盛り上がる。その中で、早瀬左近の2台目の愛車として活躍し、フェラーリ365GT4 BBとランボルギーニカウンタックとともに「スーパーカー御三家」として崇められた。

しかし、ポルシェ911のバリエーションとして送り出されただけに、1975年から生産終了の1989年までに、2万1589台も生産されている。

それはスーパーカーの生産台数ではなく、量産スポーツカーにあたるもので、ポピュラーな存在であることを印象付けた。

初期型930ターボ 競売に出品

生産台数が多いことから、コレクターズカー・オークションでも930ターボはポピュラーな存在といえる。

しかし、そのほとんどは3.3Lエンジンを積む1978年以降のモデルで、3.0Lエンジンの初期型は生産台数が2819台と少ないことからあまり姿を見せない。

エンジンフードと一体のFRP製のリアウイングは初期型の証し。
エンジンフードと一体のFRP製のリアウイングは初期型の証し。    RM Sotheby’s

こうしたなかで、極初期の素晴らしいコンディションの1975年製930ターボが競売の対象となった。

シャシーナンバーは、9305700065。この個体が、7月14日から22日にかけてオンラインで開かれたRMサザビーズ・オープンロード・ヨーロピアン・サマー・オークションに出品されたのだ。

1975年製の930ターボは274台が作られただけで、本シャシーナンバーは55番目に製作されている。

特注のカラーコード432コッパー・ダイアモンド・メタリックは、独特な凄みを感じさせる大人のボディカラーと言えよう。

記事に関わった人々

  • 上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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