【V6エンジンのワイドな異端児】ルノー・クリオV6とVWニュービートルRSI 前編

公開 : 2020.09.12 07:20  更新 : 2021.03.05 21:34

心臓が口から飛び出るような運転体験

エンジンサウンドは洗練され、手頃なハッチバック、クリオのインテリアと奇妙な関係を生んでいる。当時の価格は2万5995ポンド。フロントエンジン最強だった、クリオ172より1万1000ポンドも高かった。広告では、ポルシェボクスターと比較された。

ブルーとグレーに着色された、プラスティック製部品が車内を飾る。シートの位置は高く、サイドサポートも甘い。広々とした前席回りは、基本的にクリオ172と共通。大幅に肉体改造された容姿とは裏腹でもある。

ルノー・クリオ(ルーテシア)V6 フェイズ1(英国仕様/2001〜2003年)
ルノー・クリオ(ルーテシア)V6 フェイズ1(英国仕様/2001〜2003年)

シャシーはまったくの別物。リアのボックスセクションには、専用のマルチリンク・サスペンションを装備。フロント部分には、4気筒エンジンではなく、補強用のクロスメンバーが組まれた。

フロント・トレッドは110mm拡幅。リアは138mmも広い。フロントフェンダーは切り取られ、幅広の17インチホイールを収める、専用のフェンダーが溶接されている。クリオ172は、15インチだった。

ブレーキは、APレーシング社製の4ポッド・キャリパー。かなりハードコアなモディファイだといえる。

ところがルノーは、グランドツアラー指向の強い、しなやかな乗り心地のスポーツカーとして売り出した。その柔らかさが、心臓が口から飛び出るような、チャレンジングなドライビング体験を生んでいる。

クリオV6は穏やかにボデイをロールさせ、橋桁の継ぎ目も滑らかにこなす。だがコーナリング時は、リアタイヤは外へ流れようとする。攻め込まずとも、ボディの重心移動がダイナミクスへ大きな影響を与えているのがわかる。

短い全長、軽いフロントと重いリア

普通に運転している限り、悠々と走れる。ステアリングは重さを増し、精度が高められている。長いシフトレバーが、通常のクリオより高い位置に伸びる。鋭く噛み付くAPレーシングのブレーキとは好対照だ。

V6エンジンは、低回転域からエネルギッシュにボディを進める。ラグーナから持ってきたエンジンに、圧縮比を高めた専用ピストンと、最適化された給排気システムが組まれている。フライホイールも軽量化された。

ルノー・クリオ(ルーテシア)V6 フェイズ1(英国仕様/2001〜2003年)
ルノー・クリオ(ルーテシア)V6 フェイズ1(英国仕様/2001〜2003年)

レブリミットは500rpm高め、7100rpmへ設定。最高出力は20psをプラスし、233psを獲得した。

小さなボディに大きなエンジン。ところが、アクセルを踏み倒しても、期待ほど初めの勢いはない。V6エンジンを搭載したことで、車重はクリオ172より300kg以上重い、1355kgになっていた。

回転の上昇とともに、加速は激しさを増す。7000rpm目がけて、怒ったように威勢よく吹け上がる。必死にならずとも、ハイペースで走るのに不足ないパンチ力がある。

ABSの設定は素晴らしく、フロントタイヤがロックするギリギリまで制動力を発生。ブレーキペダルを踏むと、勢いよく速度を殺せる。

アクセルペダルを放し、フロントノーズをコーナーへ向ける時は注意が必要。前が軽く、フロントタイヤは外へ滑ろうとする。デリケートでシンプルな、物理の法則が存在する。

クリオV6は、ミドシップ・スポーツカーとしては全長が短く、足まわりは柔らかい。リア寄りの重たいエンジンは、コーナリング時に外側のリアタイヤへ、荷重を載せる。サスペンションは圧縮され、エンジンは振り子のように振る舞う。

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