【理想を目指したヴァンキッシュ】アストン マーティン・カラム・ヴァンキッシュ25へ試乗

公開 : 2020.09.08 10:20

初代アストン マーティン・ヴァンキッシュに大幅に手が加えられた、カラム・ヴァンキッシュ25。思わず二度見するほどの価格ですが、見事な職人技による車内と、グランドツアラーとしての優れた性能を獲得しています。

イアン・カラムの理想のデザインを追求

text:Steve Cropley(スティーブ・クロップリー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
初代アストン マーティンヴァンキッシュのデザイナー、イアン・カラム。彼はヴァンキッシュの存在を誇りに思っている。ゼロから手掛けたデザインとして、彼のキャリアの初期に生まれたモデルでもある。

ヴァンキッシュは、現代的なブランドへとアストン マーティンを導いた。タイムレスなデザインは、20年以上を経た今でも美しく感じられる。

アストン マーティン・カラム・ヴァンキッシュ25 バイ Rリフォージド(英国仕様)
アストン マーティン・カラム・ヴァンキッシュ25 バイ Rリフォージド(英国仕様)

一方、デザイナーとして気に入らない部分も含まれていたらしい。ローテクなヘッドライトに、DB7譲りのフォグライト。控えめなホイール。大胆なホイールアーチより、だいぶ内側に収まるタイヤ。ノーズやテールの造形も、彼の意図より大人しい仕上がりだった。

特にカラムが落胆したのが、インテリア。デザインテーマは明確だったが、投入された職人技術は限定的。既存部品が、多く用いられていた。

その後カラムは、ジャガーのデザイン責任者に就任。20年ほどのキャリアを積んだ今、新たなデザイン・ビジネスをスタートさせた。最初のプロジェクトとなるのが、このカラム・ヴァンキッシュだ。

カラム・ヴァンキッシュは、英国ウォリックの新しいスタジオで生み出される。クルマ以外にも、高品質なビスポーク製品を手掛ける、スイスのRリフォージド・グループが力添えしている。

インテリアやトリム・オプション、シャシーやエンジンのアップデート内容は、技術面でのトップを務める、イアン・カラムとアダム・ドンフランチェスコによって決められた。すでにカラム・ヴァンキッシュの生産は始まっている。

エンジンもボディも、すべてをモダナイズ

英国編集部は、ウォリックの本社へ招かれた。ソーシャル・ディスタンスを保ったミーティングを終えると、クルマを披露してくれ、試乗の機会を与えてくれた。

「全体で350か所の変更を加えています。通常のスーパーカーにはない水準での、クラフトマンシップも投入されています」。と話すカラム。

アストン マーティン・カラム・ヴァンキッシュ25 バイ Rリフォージド(英国仕様)
アストン マーティン・カラム・ヴァンキッシュ25 バイ Rリフォージド(英国仕様)

「細部に至るまで、アイデアを落とし込んでいます。オリジナルと同じ部分は、ボディのパネルワークのみ。わたしたちの考えは、お客様それぞれのショーカーを生み出すことです」

ヴァンキッシュに近づいてみる。その品質の高さに、見入ってしまう。

深みのあるボディの光沢。ブラック・クロームのウインドウ・トリムも美しい。大径のホイールが、フェンダーに絶妙なスタンスで収まる。すべてが、モダナイズしてある。

カラムが説明する。「初代ヴァンキッシュを手掛けてから、20才も歳を取りました。その間の変化は大きい。ライフスタイルもファッションも異なります。クルマを再び考える機会を得たとき、何をするべきか、すぐに見極めることができました」

アストン マーティン製の5.9L V型12気筒エンジンにも、軽い手直しが施された。最高出力は60ps増しの、588psへ引き上げられている。吸気系統は、美しい特別仕様だ。

トランスミッションは、6速MTか8速ATが選べる。あるいは、純正の6速セミATのままでも構わない。当時の評判は良くなかったが、一部のドライバーはそれを好むらしい。

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