【空冷エンジンの現役トリオ】ホンダN360 VWビートル シトロエン・アミ 後編

公開 : 2020.10.03 16:50  更新 : 2022.08.08 07:37

彼のカーコレクションでは、馬力は大きな意味を持ちません。共通するテーマは、コンパクトな空冷エンジン・モデルだということ。いまも日常的に乗っているという、ホンダとVW、シトロエンの個性派トリオをご紹介しましょう。

うるさく、滑らかに回る2気筒エンジン

text:Martin Buckley(マーティン・バックリー)
photo:James Mann(ジェームズ・マン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
ホンダN360の窓は大きく、開放的。ダッシュボードには木目調パネルがあしらわれ、グローブボックスも大きい。ワンランク上の雰囲気がある。

ドアハンドル部分のボディはえぐられ、サンバイザーにはホンダのエンボスが入る。貧しい感じはない。日本のメーカーは、自動車作りを急速に習得した。ホンダは、現代的に運転できる。

フォルクスワーゲン・ビートル(英国仕様/1945〜2003年)
フォルクスワーゲンビートル(英国仕様/1945〜2003年)

N360を運転して最初に感じるのが、驚くほどのうるささ。でも、芝刈り機並みのフィアット500ほどではない。

60km/hを超えた辺りでのエンジンは、とても滑らか。3速で8500rpmまで引っ張れば、さらに20km/hは伸びる。十分な加速を得るには、しっかり回す必要がある。

ダッシュボードの下から伸びるシフトノブも、良く動く。スムーズで、操作感はあか抜けている。

小さなボディに、クイックなステアリング。シャープに車列を縫いながら、交差点を曲がる。市街地なら、走りに不満を感じる場面はほとんどないだろう。

スピードバンプと呼ばれるコブも、お手の物。盛大なノイズを気にせず、大型トラックやバスを怖がらなければ、町中では運転の楽しい相棒になる。

一方の、フォルクスワーゲン・ビートルも魅力的。オーナーのティム・ジャーマンが一番長い距離を載っているクルマだ。アウトバーンを高速でクルージングできるよう、設計されている。

N360が必死な速度域でも、ビートルは穏やか。4速のトップギアで、1000rpmくらいが28km/h。4000rpmまで回せば、112km/hで走れる。

信頼性に優れ美しい、ほかにはない個性

空冷式のボクサー4は、耐久性でも有名。基本設計は1930年代だが、1950年代から1960年代でも、まっとうなコンパクト・ファリミーカーとして運転できた。

当時の英国価格は700ポンドを切った。モーリス・マイナーやオースチンA40とも、充分な競争力を持っていた。

フォルクスワーゲン・ビートル(英国仕様/1945〜2003年)
フォルクスワーゲン・ビートル(英国仕様/1945〜2003年)

彼のクルマは、1959年に57万5407台が作られた中の1台。年間の生産台数は、1965年になると100万台を超えた。今日の想像以上に、ビートルは刺激的なブームを生んでいた。

先入観を抜きにして、いまでも信頼性に優れ、美しい。ほかにはない個性がある。

フォルクスワーゲンの車内は、ドイツ車らしい。優れた仕上げと、骨格むき出しの質素さとが混在する、独特の雰囲気もある。実用的でストイックだ。

ポップな白いステアリングホイールやスイッチ類は、クラシカル。燃料タンク横のフューエル・タップなども、少々時代遅れだった。

ドアは見事に閉まり、サイドウインドウは滑らかに上下する。ペダルは、フロントタイヤ部分の膨らみをよけ、少しオフセットしている。シフトノブは、フロアパンから垂直に生えている。

軽快で正確な変速は、ビートルの美点の1つ。ステアリングホイールの操舵感も軽く滑らか。ロックトゥロックは3回転を切る。

リア寄りの重量配分と、スイングアクスル式のサスペンションだから、動的性能に限界はある。だが、想像以上に許容値は高い。普通に走っている限り、操縦性はまとまりが良く、乗り心地も良い。

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