【販売目標たったの600台】トヨタ・グランエースの存在意義 「無くてはならない」理由を試乗で探る

公開 : 2020.09.30 05:50  更新 : 2022.03.24 21:24

今回はちょっとめずらしいクルマの試乗記です。トヨタ・グランエース。年間販売目標は600台。「箱っぽい」クルマは多いけれど、しかしグランエースならではの存在意義がありました。渡辺敏史のレポートです。

日本のニーズが汲まれたグランエース

text:Toshifumi Watanabe(渡辺敏史)
photo:Satoshi Kamimura(神村 聖)

19年にフルモデルチェンジが施された300系ハイエースは、ASEANや中南米、アフリカなどで販売される国際戦略商用車だ。

日本はサイズや積載性の関係で200系が継続販売されているが、そう遠くない先に、この300系を土台に車格を整えた新型が投入されるものと思われる。

トヨタ・グランエース
トヨタ・グランエース    神村 聖

ただし、セミボンネット型を採りながら4ナンバーに収めると荷室容量が減ることになるわけで、キャブオーバー型にアレンジされるかなどの詳細は定かではない。

300系ハイエースは仕向地のニーズに合わせて貨物用やコミューター用など様々なアレンジが可能だ。

そして、その内外装をショーファードリブン向けに架装したモデルとしてマジェスティがタイ向けとして、グランビアがオーストラリア、台湾向けとして販売されている。

いずれもその広大な空間を6〜10人乗りとして用いており、VIPなどの送迎にも対応する設えだ。

日本で販売されるグランエースは、このマジェスティやグランビアと同じコンセプトで開発された。

内外装はほぼ共通だが、シートアレンジなどは日本のニーズが汲まれて、アルファードヴェルファイアやハイエースワゴンとの差別化が図られている。

生産はハイエースなどの生産を担うトヨタ車体のいなべ工場が担当。年間販売目標は600台というから、トヨタのシェアに対すればかなり少数の見立てということになるだろう。

なぜ日本でグランエースを売るのか。

グランエース、日本で売られる理由は

トヨタがなぜ日本でグランエースを売るのか。

1つは高まるインバウンド需要への対応があったと想像できる。4〜5名のゲストを人数分のXXL級スーツケースと共に送迎するというニーズを考えると、アルファード&ヴェルファイアには文字通り荷が重い。

トヨタ・グランエースの2列目シート。
トヨタ・グランエースの2列目シート。    神村 聖

一方でハイエースワゴンは10人の乗車定員に拘りすぎていて、相応の賓客を迎えるには席間に余裕がない。

どちらにもできない芸当を持つグランエースに少ないながらもニーズがあると踏んだのだろう。

おわかりの通り、そのピークはトヨタが最高位のスポンサーとなっている今年の東京オリンピック&パラリンピックにあったわけだが、コロナ禍の中、オリパラは延期となり、玄関口である国際空港は閑古鳥だ。

観光業は送迎車どころではないという中で、グランエースにとっても出鼻をくじかれた形となっている。それもあってか、東京にいてさえこのクルマをみる機会は相当少ない。

とはいえ、時が経てばインバウンドは確実に戻ってくるわけで、建設やリニューアルのラッシュが続く続いたハイクラスのホテルや旅館、もしくはハイヤー会社や企業の社用など、グランエースの趣旨にフィットするニーズも増えてくるだろう。

或いはトヨタは殆ど頭数として勘定していないだろうが、現物に触れる機会が増えるにつれ、個人需要も生まれてくるのかもしれない。

記事に関わった人々

  • 渡辺敏史

    Toshifumi Watanabe

    1967年生まれ。企画室ネコにて二輪・四輪誌の編集に携わった後、自動車ライターとしてフリーに。車歴の90%以上は中古車で、今までに購入した新車はJA11型スズキ・ジムニー(フルメタルドア)、NHW10型トヨタ・プリウス(人生唯一のミズテン買い)、FD3S型マツダRX-7の3台。現在はそのRX−7と中古の996型ポルシェ911を愛用中。
  • 神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。

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