【世界初の量産V6を搭載】ランチア・アウレリアとフラミニア 評価のわかれたクーペ 後編

公開 : 2020.10.24 16:50  更新 : 2022.08.08 07:35

滑らかなトルクと反応の良いパワー感

2台ともにハンサムで、お皿のようにメーターが大きい。ペダルはフロアヒンジ。ダッシュボードのスイッチ類は高級感があるものの、ランダムに選ばれたようにも見える。

新車当時でも決して速いクルマではなかったが、アウレリアの排気音が、深く滑らかに響く。シフトレバーは、金属的な精度の高さを匂わせる。V6エンジンの即時的なピックアップが、気持ちをそそる。

ランチア・アウレリアB20 GT S6(1957年〜1958年)
ランチア・アウレリアB20 GT S6(1957年〜1958年)

フラミリア・クーペも感触は似ているが、全体的にリモート感があり一体感は薄い。生々しい雰囲気が、微妙に薄められている。

車重はアウレリアより200kg重い。エンジンは滑らかだから、車内からは落ち着いて感じられる。タペットノイズはやや大きい。2速や3速で回転数を引っ張れば、同等の中間加速は得られるだろう。

どちらも、高回転域でのパワーを楽しむタイプではない。滑らかなトルクと、反応の良いパワーデリバリー、変速を味わうタイプのユニットだ。それだけに、街なかでの運転もしやすい。

アウレリアほどではないものの、フラミリアの変速フィールも素晴らしく正確。低い段数でのギアの唸りは、アウレリアのように聞こえてこない。シンクロは強化され、クイックに変速できる。

どちらのランチアも、高速で走らせてもガタツキやきしむ音はない。目に見えない部分へのコストを惜しまない改良が、洗練性となって表れている。

バランスに優れる流暢な身のこなし

フラミリアのブレーキは、4本ともにダンロップ製のディスク。強い制動力で、50歳を重ねるクルマにしては安心感が高い。アウレリアはドラムで、より強くペダルを踏む必要があるものの、それでも充分に良く効く。

ハンドリングは当然のように良い。現代の交通に交わっても、落ち着いて運転できる。大きく速いクルマなら速度を落としたいカーブでも、控えめなパワーを活かしながら、滑らかに抜けていく。

ランチア・アウレリアB20 GT S6/ランチア・フラミリア・クーペ 2.8
ランチア・アウレリアB20 GT S6/ランチア・フラミリア・クーペ 2.8

細身のタイヤからは、ランチアの優れるバランスや、流暢な身のこなしを想像できない。路面の隆起やうねりを見事に吸収し、安定性も良い。ドライバーの熱意を示すように、ボディは程よくロールする。

アウレリアの方が、ステアリングはクイックで重い。フラミリアはより軽く、レシオもややスロー。直立気味の大きなステアリングホイールを介して、正確に操れる。

フラミリアのグリップ力は高い。アンダーステアはほぼなく、もう少しの余裕があることを感じさせてくれる。

2台のランチアは、ドライバーの気持ちに応え、充足感を与えてくれる。メルセデス・ベンツジャガーのターゲット層を取り込むような、洗練されたクルマを目指して開発されている。特にアウレリアは、今でも多くの輝きを感じさせる。

実際は、アウレリアもフラミリアも、多くのドライバーを獲得することはできなかった。フラミリアの方が技術的には洗練されている。しかしボディは大きく重く、必要な3.0Lエンジンが搭載されることもなかった。

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