【“実戦向き”高性能】GRヤリス試乗 RZハイパフォーマンスの走りは? RZ/RSと乗り比べ評価

公開 : 2020.11.24 05:50  更新 : 2021.12.27 23:52

「GRヤリス」の3モデルを比較試乗レポート。272ps/6速マニュアル/4WDのRZ系、120ps/CVT/FFの「RS」を乗り比べます。専用3ドア・ボディを与えられたホットハッチの評価は?

どんなクルマ?

text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)

世界ラリー選手権(WRC)のトップカテゴリー(WRカー)への承認を受けるために開発されたモデルが、GRヤリスだ。

もちろん、WRカーはパワートレインや駆動システムも含めて大幅な設計変更が加えられるので、あくまでもベースモデルとしての開発である。

GRヤリスRZハイパフォーマンス(プラチナホワイトパールマイカ)
GRヤリスRZハイパフォーマンス(プラチナホワイトパールマイカ)    前田恵介

と言えば、WRカーとは「中身は別物」となってしまうが、WRCだけがGRヤリスの目標ではない。日本ラリー選手権のトップカテゴリーへの参戦も前提とする。

ナンバー付き車両で争う国内ラリーでは大幅改造は不可。素の戦闘力が物を言う。国内ラリーを前提にすれば正に闘うために生まれたモデルなのだ。

大きく張り出したフェンダーを備えた専用3ドア・ボディに、272psの最高出力を生み出す専用開発の3気筒1.6Lターボを搭載。

サスはストラット/ダブルウイッシュボーンを採用するがヤリス用ではなく、前後とも上級クラス用をベースにしている。4WDシステムには多板クラッチ式の電子制御カップリング(ECC)を用いる。

ただし、価格面でエントリーに位置するRSは、ヤリスと同じくNA 1.5L/CVTを搭載したFFとなっている。

ターボ車は、RZ/RZハイパフォーマンス/RCの3モデル構成。全モデルともサスチューニングを違えるなど、各モデルのキャラに最適化した設計を採用している。

4WD トルク配分に注目

RZ/RZハイパフォーマンスに標準のECCによるトルクスプリット4WDは、今や4WDの標準的システムだが、GRヤリスは違っている。

トルク配分は最大で前輪30/後輪70まで制御。

2名乗車にすれば、225/40R18サイズのタイヤ4本に加え、さらに積載スペースも確保できるトランク。
2名乗車にすれば、225/40R18サイズのタイヤ4本に加え、さらに積載スペースも確保できるトランク。    前田恵介

FFベースの4WDで後輪に多く配分するのは何とも不思議だが、その秘密は前後輪最終減速比。リアデフが約73%も速いのだ。

ECCの締結力が高まるほど後輪へのトルク配分が増加し、完全に締結する直前で後輪伝達トルク最大になる。

通常のECCとは異なり、完全締結状態にはならない。そのためカップリングとデフは容量に余裕のあるRAV4をベースとし、クラッチの枚数増加やフェーシングの変更などが加えられている。かなり斬新な設計だ。

試乗した印象では、一般的なECCの締結力を高い領域で制御しているような感じ。

RZ系のハンドリングを試す

RZハイパフォーマンス

低負荷の2WD走行時以外は、駆動系の緩みがほとんど感じられない。

とくに、前後輪ともにトルセンLSDを装備したRZハイパフォーマンスはその感が強く、減速を残したターンインから定常円、立ち上がりまで前後輪負荷が安定。

GRヤリスRZハイパフォーマンス(プラチナホワイトパールマイカ)
GRヤリスRZハイパフォーマンス(プラチナホワイトパールマイカ)    前田恵介

揺れ返しなどの不要な挙動も極めて少ない。

この傾向は、4WD制御モードのノーマル/スポーツ/トラックの順で強くなる。

軽快感は逆になるのだが、基本特性が速度制御でコーナリングラインをコントロールするタイプなので、負荷バランスの変動が抑えられた「トラック」が最も好ましく感じられた。

RZは、どんな感じ?

同じ4WDシステムを採用するRZは、サスチューンが多少マイルドになり、前後ともにオープンデフを採用。

同じモードを選択しても、RZハイパフォーマンスに比べると多少軽快な印象を覚えるが、細かな揺動が目立つ。

基本操縦特性は共通しているのだが、駆動系ダンピング感やサスの収束感が落ちている。効率的限界走行を考えると多少劣るのだが、本質を換えずに操る手応えを高めたのは現実的。

ファントゥドライブ派向けとも言える。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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