【30psでも浸れる喜び】初代フィアット・パンダ30 ジウジアーロの四角いボディ 前編

公開 : 2020.12.19 07:25

ジウジアーロが生み出した、シンプルで美しく、四角いフィアット・パンダ。2020年は、パンダ誕生から40周年目に当たります。今回は2003年まで作られた初代の歴史と、1980年式のパンダ30をご紹介しましょう。

イタリアン・コンパクトのアイコン

text:Richard Heseltine(リチャード・ヘーゼルタイン)
photo:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
運転中、無意識に愛車へ声をかけてしまう、という読者も少なくないだろう。時には敬意を持って。

「エンジンちゃん頑張って。きっとこの丘も登れるよ。雨が降ってきたね。30馬力でも大丈夫。急いでいないから、このまま登りきってちょうだい」。筆者が年代物のフィアット・パンダに乗ったら、こんな調子だ。

フィアット・パンダ30(1980〜2003年)
フィアット・パンダ30(1980〜2003年)

エンジンはうるさい。ガソリンを燃やしていることを隠そうとしない。悩むのは、2速から3速へシフトアップするかどうか。試しに3速に上げてみる。息切れしそうで、2速に戻す。後ろのSUVとの車間距離が縮まる。

頂上にたどり着いた。今度は路面に空いた穴をスラロームのように避けながら、一気に下る。タイヤの幅は145しかない。ステアリングは軽く、コミュニケーション量も多い。

80km/hでクルージングする。エンジンノイズは相変わらずだが、車内はだいぶ静か。ベーシックなモデルだが、快適性もむげにされてはいない。エアコンなどの操作系の配置も、理論的でわかりやすい。

視認性も良好。今日の相手は1980年式のフィアット・パンダ30。運転が楽しい、ボクシーなデザインの小さくて愉快な古いイタリア車だ。

フィアット・パンダは、イタリアン・コンパクトのアイコンの1つでもある。アイコニックという言葉は、最近多用されがちに思えるが、ミニマルに仕上げられたフィアット・パンダこそ、象徴的な単語に相応しい。

デザインはイタルデザインのジウジアーロ

もちろんイタリアン・スーパーカーも、歴史に残る高い評価を残してきた。でも、現実的で民主的なクルマ社会に大きな影響を与えたのは、パンダの方だ。

2020年は、フィアット・パンダ誕生から40年目に当たる。初代パンダが発表されたのは1980年3月のジュネーブ・モーターショー。500トポリーノや500ヌーヴォ、600、126などに続く、小さなフィアットとして。

フィアット・パンダ30(1980〜2003年)
フィアット・パンダ30(1980〜2003年)

パンダが先輩モデルと違っていた点は、社外デザインだったこと。1970年代のイタリアは政治的にも経済的にも不安定で、労働力や資金の確保が難しかった。新しいエントリーモデルの開発はイタルデザインへ外注する決定を、フィアットの取締役会に導いた。

1968年に、デザイナーのジョルジェット・ジウジアーロと技術者のアルド・マントヴァーニによって設立された、イタルデザイン社。世界的企業のモデル開発に参画し、成長を続けていた。

ジウジアーロはベルトーネ社やギア社で多くのエキゾチック・モデルを描き出し、イタルデザイン設立後はフォルクスワーゲン・ゴルフアルファ・ロメオ・アルファスッドなどをデザイン。フィアットの姉妹ブランド、ランチア・デルタも手掛けている。

ジウジアーロによれば、フィアット・パンダはアルファスッドの開発で協力を受けたオーストリアの技術者、ルドルフ・フルシュカによる考案だったという。しかし、ルドルフはパンダの開発が始まる前に、フィアットを離れている。

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