【725kgに431ps】ラディカルSR10に試乗 フォード製2.3Lユニット サーキット専用スポーツ 後編

公開 : 2020.12.09 10:25

サーキットマシンとして登場した、ラディカルSR10。2.3Lフォード製エンジンが431psを発生し、パワーウエイトレシオはマクラーレン・セナを凌駕します。圧倒的なパフォーマンスに、英国編集部は惹き込まれたようです。

ロードカーでは得られない次元の楽しさ

text:Andrew Frankel(アンドリュー・フランケル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
これまでのラディカルSR3やSR8と、新しいSR10で大きく異なるのは、52.4kg-mという段違いのトルクの太さ。豊かなトルクは、大概の場面でドライバビリティを改善してくれる。

SR8のようなピーキーなエンジンの場合、必死に運転していない限り、ドライバーへは冷たい。でもトルクが太ければ、選んだギアが高すぎても、間違って速度を落としすぎても、対処方法はアクセルペダルを深く踏み込むだけでOK。

ラディカルSR10(英国仕様)
ラディカルSR10(英国仕様)

このメリットは大きい。どんなサーキットを走っても、ラディカルをミサイルのように突き飛ばすことへ集中できる。

アクセルペダルを踏み込むと、息を呑むほどに速い。一般的なスーパーカーをゆっくりに感じさせるほどの勢いで、ハイスピード・コーナーを縫っていく。

レース用のスリックタイヤと空力性能を高めたボディ・パッケージ、調整式サスペンションにギリギリのロードクリアランスだから、当然といえば当然。ロードカーでは得られない次元の痛烈さがある。

コーナリング時に外側方向へ生じる加速度、横Gは、最大で2.3Gに達するという。高性能なスポーツカーの2倍に匹敵する。ブレーキペダルを蹴飛ばすと、ほとんど呼吸できないほどの勢いで身体がシートベルトに押し付けられる。

試乗した日の路面状況は、トリッキーだった。スリックタイヤにはやや水分が多すぎる。かといって、ウェットタイヤでベストと感じるには水が少ない。

結局両方のタイヤで走行してみたが、まったく問題を感じなかった。電子的なドライバー・アシストが、一切付いていなくても。

感服させられるパッケージング

シャシーバランスは素晴らしく、タイヤを問わずテールスライドは自由自在。スリックタイヤで走行中、急に外へ流れてもフロントタイヤのグリップ回復が早く、手に負えなくなる状況にはほとんどない。

ボディは725kgと軽量で、セットアップにも優れ、安定性は極めて高い。アクセルオフでラインが乱される心配もなく、いつでもステアリングの修正が可能。

ラディカルSR10(英国仕様)
ラディカルSR10(英国仕様)

コーナー進入時にブレーキ圧が強すぎると、フロントタイヤは簡単にロックしてしまう。でも、それに対処する方法もほどなく掴める。パッケージングに感服させられる。

さらにSR10へ、トラクションコントロールの効きの強さや、介入ポイントの調整が可能なシステムが追加されれば、多くのドライバーにメリットがあるだろう。

マシンの完成度は高いから、電子システムを必要に感じない人もいるとは思う。でも、ターゲットとしているサーキットの走行会を楽しむドライバーなら、ありがたく感じる人も多いはず。よりラディカルSR10を楽しめる。筆者もそうだ。

今回は、最新のラディカルSR3 XXを運転する機会も与えられた。229psを絞り出すスズキ製の1.5Lエンジンを搭載したマシンで、パワーはSR10に及ばない。でも車重は100kg以上も軽い620kg。価格も70%程度で済む。こちらも侮れないマシンだった。

ラディカルSR10は、もとても気に入った。エンジンは少々ラフな印象だが、すこぶる走りは楽しいし、見事な仕上がりだと思う。でも、ラディカルSR3 XXも大好きだ。

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