【最高級の最上級】アウディS8に試乗 A8ではなくS8を選ぶ価値は? 肉体的/精神的にストレス極小

公開 : 2020.12.28 17:45  更新 : 2021.10.11 13:37

アウディS8の試乗記事です。A8の価格に450万円を上乗せして購入する価値がどこにあるのか? 焦点をあてました。肉体的にも精神的にもストレス極小と筆者。

アウディS8の「立ち位置」

text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)
photo:Masakatsu Sato(佐藤正勝)

現在、アウディはカテゴリーやクラスを別として3つのシリーズに大別できる。

1つは標準系、そして性能向上を図ったSシリーズとRSシリーズである。

標準系の持ち味を活かした高性能を求めたSシリーズの象徴的な存在がS8とも言える。
標準系の持ち味を活かした高性能を求めたSシリーズの象徴的な存在がS8とも言える。    佐藤正勝

RSシリーズはメルセデス車のAMGやBMW車のMシリーズに相当し、アウディスポーツにより企画されアウディの性能面のトップブランドとして展開。

一方、Sシリーズは標準系から発展した高性能モデルという位置付けである。

試乗したS8は車名のとおりA8の高性能モデルとなるのだが、前述のRSシリーズはRS6/RS7が最上級車格となりA8系には設定されていない。

ショーファードリブン用途にも供されるA8のキャラを考えればRSシリーズがないのも腑に落ちるが、逆に考えれば標準系の持ち味を活かした高性能を求めたSシリーズの象徴的な存在がS8とも言える。

絶対的な速さとファントゥドライブの追求ではなく、フラッグシップセダンとしての高性能を求めたモデルという訳だ。

「その速さをして荒ぶる感覚が皆無」

エアロ感をわずかに強調したフロントエアダムや4本出しのエグゾーストフィニッシャーなどのデザイン変更が加えられているが、ボディ周りの印象はA8とあまり変わらない。

強いて挙げるなら赤く塗装されたブレーキキャリパーが多少「只者ではない」雰囲気を漂わせるくらいだ。

アウディS8はデザイン変更が加えられているが、ボディ周りの印象はA8とあまり変わらない。
アウディS8はデザイン変更が加えられているが、ボディ周りの印象はA8とあまり変わらない。    佐藤正勝

内装も加飾パネルが専用になるものの、殊更に高性能やスポーツ性を強調した演出はなく、あくまでも品よくエレガントな趣を崩さない。

パワートレインは60 TFSI同様の48Vマイルドハイブリッド採用の4L V8ツインターボとトルコン式8速ATの組み合わせだが、最高出力、最大トルク共に20%以上向上。

一応確認のため全開加速もさせたが、高速でも試せるのはわずか数秒。使えないほど速い。571psのパワーをどこで使うのか思い浮かばない。

驚かされるのはその速さをして荒ぶる感覚が皆無なのだ。笑顔のまま100m 9秒台で走り抜けて泰然としているような感じだ。

全開でも紳士的なら普段の走りも推して知るべし。

これだけのパワーを絞り出していても、高出力化の悪影響は皆無。

最大トルクを2000-4500rpmで発生するトルク特性も利いているのだが、内燃機が苦手な低回転域の少ない踏み込みでも即応するのだ。

低負荷から高負荷への移行も自然であり、踏み込み量や回転域を問わずに従順。力の量も質も申し分なく、プレミアムを実感する高性能である。

記事に関わった人々

  • 佐藤正勝

    Masakatsu Sato

    1964年生まれ。1984年東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業後、八重洲PRセンターに入社。86年にF1/ルマン24時間を撮影後何かのスイッチが入ったらしく退社。フリーとなり国内外のレースを撮影。91年に撮影したDTMで、また何かのスイッチが入ったらしくどっぷりドイツ漬けに。現在は撮影のみならず、CS放送でのレース解説や雑誌への執筆も。
  • 川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。

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