【「運転」どう変わる】自動運転「レベル3」 事故の際、責任は? ホンダは世界初の型式指定

公開 : 2021.01.18 05:45  更新 : 2021.10.22 10:13

レベル3の作動中の事故の責任は?

あらためて国土交通省の説明を読むと、「作動後、走行環境条件を満たさなくなる場合や故障発生時等においては、警報を発し運転者による運転操作を求めますので、運転者は過信せず常に運転できる状況を維持する必要があります」とされている。

役所的で難解な表現だが、要は自動運行装置は完全ではないから、渋滞中に作動している時でも、手に負えなくなってドライバーの運転を求めることがある。いつでも運転できる準備をしておかねばならない、という意味だ。

自動運転装置の構成
自動運転装置の構成    国土交通省

そうなると安心してスマートフォンなどを見ていられるのか。自動運行装置の手に負えない状況では、おそらくドライバーにとっても運転操作が難しいだろう。

スマートフォンを見ている時に警報が鳴り、前方を見たら急いでブレーキペダルを踏み、ステアリング操作をする状況が迫っているかも知れない。これではドライバーも正確な対応ができない。違反になるか否かは別として、結局のところレベル2と同じく前方を注視する必要があるのではいか。

また、レベル3の作動中に交通事故が発生した場合、責任の所在はどうなるのか。この点を国土交通省に尋ねると、以下の返答だった。

「レベル3の自動運行装置が作動している時は、ドライバーは前方を注視する必要はない。ただし、必要に応じて、運転者に運転操作を引き継ぐことが考えられる。引き継ぎの要求は何回かおこなう。作動中に万一事故が発生した時の責任の所在は、状況によって異なる。そこは警察が判断する」

一方、ホンダに同様の質問をすると、事故の発生に関する見解は異なり、「事故が発生した時の責任は、ドライバーが負うことになる」という。

実際の使い勝手、レベル2手離しに近い

国土交通省では、運転者に運転操作を引き継ぐことも考えられ、その時の引き継ぎ要求は何回かおこなうとしているが、その余裕がない場合も考えられる。システムの作動後に、走行環境条件を満たせない状況が急に発生した時などだ。

レベル3の作動中に事故が発生した場合、前述のとおりドライバーの責任になる可能性が高い。そうなるとドライバーは常に前方を見て、システムとのダブルチェックをおこなう必要がある。走行環境条件を満たせない状況になったら、即座に対応せねばならないからだ。

ホンダ・レジェンドの「トラフィックジャム・パイロット」
ホンダ・レジェンドの「トラフィックジャム・パイロット」    ホンダ

また、正常に作動している時も、50km/hを超えると自動運行装置が解除されるから、速度変化を常に認識しておかねばならない。

こういった事柄を考えると、実際の使い勝手はレベル2の手離し運転に近い。作動中はのんびりとスマートフォンをチェックできて、万一事故が生じたらメーカーの責任、とはなりそうもない。

そうなると「なぜレベル2ではなくレベル3にするのか」という疑問も生じる。国土交通省によると「自動運転は内閣府も力を入れる事業」だが、長らくレベル2に留まっていた。

その進捗を促され、ホンダがレベル3に踏み込んだとも受け取られる。

自動運転は将来の大切な技術で、安全性も大きく左右する。先を急がず、国も余計な思惑を介入させず、技術を着実に進化させるべきだ。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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