【誕生から60年】ジャガーEタイプ シリーズ1とシリーズ3を比較 3.8L直6x5.3L V12 前編

公開 : 2021.01.23 07:25

1961年、世界中へ衝撃を与えた1台のスポーツカーが誕生しました。美しいボディに包まれた、ジャガーEタイプです。2021年に60周年を迎える直6のシリーズ1と、最後を飾ったV12のシリーズ3の2台をご紹介しましょう。

英国市民に大きな衝撃を与えたEタイプ

text:Richard Heseltine(リチャード・ヘーゼルタイン)
photo:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
多くの人が2台のEタイプの周りを囲み、思い出話を口にしている。モータースポーツへ手を出した人もいれば、ブラウンズレーンの本社工場で働いていた人もいるようだ。

英国中部、コベントリーの南にあるロイヤル・レミントン・スパでの取材は、多くの人で賑わった。クルマ好きだけでなく、人混みに寄ってきた見物人、警察官もいる。誰もがEタイプに笑顔を見せる。

ジャガーEタイプ・シリーズ1 3.8とジャガーEタイプ・シリーズ3 V12
ジャガーEタイプ・シリーズ1 3.8とジャガーEタイプ・シリーズ3 V12

これがフェラーリなら、英国ではこんな空気にならなかっただろう。1日中、陽気な雰囲気が続いた。ジャガーEタイプならではの、素晴らしい特徴だと思う。10歳の子供でも、60年前に10歳だった70歳の白髪でも、多くの人々がポジティブに迎えてくれる。

60年前、偉大なスポーツカーは英国市民に大きな衝撃を与えた。それ以来、その衝撃波はこの地に残っている。単なる自動車以上の、強い記憶を残した。

大げさに聞こえるかもしれないが、事実だと思っている。ただし、ジャガーEタイプには注意書きも必要だったりする。すべてのEタイプが、同じ条件で作られたわけではない。

今回ご紹介する1961年式フラットフロア・ロードスターのような初期型が、最も純粋なEタイプだといえる。一部の人は、この初期型が最高だと考えている。

一方で、モデル後期に登場したV型12気筒版を大切に乗っている人も少なくない。豊かなパワーで、大陸移動も一気にこなせるEタイプだ。1971年の発表以来、初期型の影になりながらも、ジャガーを支えてきた。

自動車界のブリジッド・バルドー

ジャガーEタイプは、1961年に英国の道を走り始めた。セミモノコック構造に独立懸架式のサスペンションを自慢とした、イタリアン・エキゾチックの多くより速かった。余裕で追い越せるほど。

発売当初なら、クーペボディのEタイプが1550ポンドで購入できた。長いバックオーダーの順番を待つことができれば。同じ頃、フェラーリ250GTは6600ポンドもした。ボルボP1800ですら、400ポンドは高かった。

ジャガーEタイプ・シリーズ1 3.8とジャガーEタイプ・シリーズ3 V12
ジャガーEタイプ・シリーズ1 3.8とジャガーEタイプ・シリーズ3 V12

魅了されるほどの美しさと、目がくらむほどの動的性能を融合させたスポーツカーだった。1961年8月、あるメディアは「自動車界のブリジッド・バルドー」と表現している。生産台数が購入希望者に追いつかなかったのは、当然だった。

最高速度241km/hというジャガーの主張は、少し誇張気味だったことは事実。でも、ほんの少し上乗せしていただけだし、水準を超える性能だったことは間違いない。

デザインは、シリーズ1と呼ばれる初期のEタイプが、最もセクシーだと感じる人は多いだろう。フロントマスクの仕上げで、その後のジャガーは悩んでいたようだ。

シリーズ1の中で、最も優れたオールラウンダーだと評されているのが、1964年に登場した4.2Lエンジン版。268psだった3.8Lの直列6気筒エンジンと最高出力に違いはないものの、排気量が大きいことでトルクは太い。

3.8Lで35.8kg-mだった最大トルクは、39.0kg-m/4000rpmまで向上。トランスミッションも、フルシンクロ化している。

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