【ジュニア・グランドツアラー】トヨタGRスープラ(最終回)長期テスト 小さなフェラーリ812

公開 : 2021.01.16 11:45  更新 : 2021.07.12 18:56

長い開発期間を経て登場したトヨタ・スープラ。充分な荷室と不足ないパワーを備えていますが、今後に続く相応しい性格付けは与えられているのでしょうか。日常的な利用を中心に評価してきた長期テストは、今回が最終回です。

積算8415km 減りの少ないミシュラン

text:Richard Lane(リチャード・レーン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
英国仕様のトヨタGRスープラが履くタイヤは、ミシュラン・パイロット・スーパースポーツ。とても素晴らしいパフォーマンスのタイヤだと思う。

今回、残り溝の深さをデジタル計で測ってみたのだが、約8000kmを走行したあとで1.5mmも減っていなかった。高速道路が中心だったとはいえ、チャレンジングな道では積極的な運転を楽しんだにも関わらず。ミシュランの技術力には脱帽だ。

トヨタGRスープラ・プロ(英国仕様)
トヨタGRスープラ・プロ(英国仕様)

積算8832km A90の後継としての高い期待

新しく生まれ変わったトヨタ・スープラ。筆者は編集部で若い部類に入るが、それでもどっぷりクルマ好き。

1990年代のA80型スープラの後に誕生したのが、A90型スープラ。北米のチューニング文化とハリウッド映画のおかげで、スープラの金額は手に届かないところにまで吊り上がっていた。

トヨタGRスープラ・プロ(英国仕様)
トヨタGRスープラ・プロ(英国仕様)

その後継として誕生したトヨタGRスープラへの期待は、極めて高かった。並外れた何かを期待していたところもある。非現実的なものを。

トヨタが実際にわれわれへ授けてくれたのは、339psを発揮するジュニア・グランドツアラーと呼べるようなクルマだった。スタイリングはフェラーリF12ベルリネッタに通じるテーマを備え、メカニズムはBMWが供給している。

価格は、約5万4000ポンド(756万円)。高いと感じる人もいるはず。でも、オールドスクールなスポーツカーの存亡が危ぶまれる中で、悪い内容とはいえないだろう。

BMWと構造を共有することのメリット

トヨタGRスープラは完璧ではない。編集部へ来た当初から、アイデンティティには複雑さを感じた。このクラスのスポーツカーとして、ハンドリングのシャープさには物足りなさがあった。

日本のスポーツカーは、従来から個性的で一風変わったところがある。マツダRX-8ホンダシビック・タイプRも、ハイブリッドの最新のホンダNSXも。ましてGRスープラは、BMW Z4と多くを共有している。シンプルにいかなくて当然かもしれない。

トヨタGRスープラ・プロ(英国仕様)
トヨタGRスープラ・プロ(英国仕様)

格上のスポーツカーに立ち向かってきたスープラが、独自性を失ったという事実は、ポルシェ911 GT3がPDKだけになった時と重なる。実際、GT3の魅力が失われたわけではなく、グループテストで勝利を掴むほど優れていた。

いまGT3を選ぶドライバーのうち、3分の2がPDKを選択している。血統と感じる部分が、優れた評価につながるすべてではないということだろう。

スープラの場合、特にインテリアが良い例だと思う。確かにロータリーコントローラーの付いたインフォテインメント・システムやパワーウインドウのスイッチ、ステアリングホイールのボタンまで、BMWの匂いが隅々に残っている。

しかし機能的で、見た目も良く、着座位置も低い。包まれ感の強い車内構造は、視界にも優れる。

長期テストのGRスープラは、英国でプロと呼ばれる仕様。アダプティブ・クルーズコントロールにヘッドアップ・ディスプレイ、リアカメラなど、フル装備といえる内容で、価格は5万4960ポンド(769万円)。

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