【W123型 230 TE】メルセデス・ベンツ初のステーションワゴン 英国導入を決めた男 後編

公開 : 2021.01.31 18:25

状態の良いW123型230 TEは5万ポンド

「ルノーが提示していた金額の3分の2程度の報酬でしたが、わたしがするべき仕事だと考えました」。と認めるアッシュマン。

今もメルセデス・ベンツとの絆は保っている。過去には、古いメルセデス・ベンツを専門とするガレージ・オーナーのマーク・コソビッチに、280CEを提供してもいる。今回、撮影車両の230 TEを持ち込んでくれた人物だ。

メルセデス・ベンツ230 TE(W123型/1980〜1986年)
メルセデス・ベンツ230 TE(W123型/1980〜1986年)

そのコソビッチは、欧州ならどこででも目にすることができる「T」ステーションワゴンの大規模なミーティングを昨年開催した。アメリカ市場で売られた300ターボから、オプション満載の280 TE、走行距離3万kmほどの230 TEまで、そうそうたる顔ぶれになったという。

今回ご紹介する1台は、その230 TE。コソビッチ自慢のステーションワゴンだ。「年配の女性が息子へ、ガーデニングのために購入したようです」。新車のようなW123は、5万ポンド(700万円)もの値段で売られていたそうだ。

近年、W123型の見られ方も大きく変わったのだろう。筆者が15歳の頃は、500ポンドから1000ポンドくらいで購入できた。まだまだ現役状態のワゴンが。

メルセデス・ベンツといえども、ステーションワゴンは耐久消費財。昔は主要な部品が壊れると、別のワゴンに買い直されていた。洗練されていたが道具的なクルマでもあり、「クラシック」とみなされることは最近までなかった。

2021年になり、最も新しいW123型のステーションワゴンでも生産から35年が経つ。高く取引されるようになって来たとはいえ、Tのレストアは商売にならないという。

今でもベストなステーションワゴンの1台

クルマとして複雑な構成を持つため、パゴダルーフのSLの方が安く簡単にレストアできるという。近年はメルセデス・ベンツの古い部品も、価格が跳ね上がっている。フロントグリル中央の小さなアルミニウム部品1つだけで、40ポンド(6000円弱)もするらしい。

とはいえW123の230 TEは、動的性能と洗練度、経済性と実用性との天秤で、最良のバランスを備えていると思う。現代のクルマの基準で判断しても、総合点はかなり高い。

メルセデス・ベンツ230 TE(W123型/1980〜1986年)
メルセデス・ベンツ230 TE(W123型/1980〜1986年)

走りは静かで滑らか。エンジンは活気に溢れ、運転席からの視界も良い。小回りも効き、速度抑制用のスピードバンプを超えても、フラットにいなしてくれる。スポーティなハンドリングがすべてだと考える21世紀の人々へ、別の姿を啓示するかのようだ。

「ステーションワゴンのTにはセルフ・レベリング機能が付いています。それがクルマの弱点にもなっています」。と話すコソビッチ。クローム仕上げのバンパーにルーフレールが付き、見た目の雰囲気はW123のサルーンよりクラシカルだ。

細部の仕上げや搭載された技術、ソリッドなクルマの質感を理解すると、当時の販売価格は充分に納得できる。むしろ、控えめな設定だったと感じるほど。

コソビッチは、仮にくたびれたW123のワゴンを見事な状態に仕上げるなら、5万ポンド(700万円)では足りなかっただろうと考えている。優雅な佇まいと内容を知れば、W123のTは今でもベストなステーションワゴンの1台だと考えて良さそうに思える。

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