【ポルシェはRRかEVか】911カレラS vs タイカン4S 後編 走りの魅力は911の圧勝

公開 : 2021.02.13 21:45

デジタル世代のポルシェ、タイカンは、サイズや重量を感じさせないみごとな走りを披露しました。しかし、アナログ世代の代表たるMTの911は、走り出した瞬間から、終始ドライバーを魅了し続け、王座を譲りませんでした。

アナログの極致は魅力的

text:Andrew Frankel(アンドリュー・フランケル)
photo:Luc Lacey(リュク・レーシー)

911のインテリアがあまりにもデジタル化されすぎているのは、このクルマのキャラクターにふさわしいとは思えない。しかし今回のクルマ、それ以外はみごとなもので、まさにベーシックな911そのものだ。665ポンド(約9.3万円)の10mmローダウンしたサスペンション以外、走りに関するオプションは装備していない。セラミックブレーキも、アクティブスタビライザーも、四輪操舵も備わらないが、どれも必要はない。

それに適した道でハードに走らせると、このクルマは直感的に操作でき、路面をしっかり掴むことを実感するはずだ。使い古された表現だが、人馬一体感を味わえる。だから、こう言いたい。ドライバーを感動させようというクルマは多いが、911はひたすら熱中させようとするのみなのだ。

室内の設えとは裏腹に、メカニズムの仕様はアナログ的。ベーシックな装備内容にMTを加えた992カレラSには、走り出した途端に魅了される。先代の991からの進化は明らか。やはり最新は最良だった。
室内の設えとは裏腹に、メカニズムの仕様はアナログ的。ベーシックな装備内容にMTを加えた992カレラSには、走り出した途端に魅了される。先代の991からの進化は明らか。やはり最新は最良だった。    LUC LACEY

それはじつに得がたい、この上なくスペシャルなことである。それゆえに、間違っているといわれるかもしれない方向に進んでも、ドライビングが好きな人間は隔たりを感じるどころか、ますます親近感を覚えるようになるのだから。

それは、速度域に関係なくいえることだ。992最大のトリックは、走りはじめからドライバーを魅了する点にある。991のスタンダードモデルだと、こうはいかなかった。さらに、MTによってますます没頭できるようになった。もはやPDKを選ぶことなど考えられない。

魔法のようなタイカンの走り

しかし、ドライバーに勘違いさせるという点でいえば、タイカンのほうがうわ手だ。911がクリスマスにハリー・ポッターの杖のおもちゃを買ってもらった子供が唱える魔法だとすれば、タイカンは一流のマジシャンの御落胤がみせる手品といったところか。911にできることを、タイカンはずっと上のレベルでやってのけるのである。

まず、実際以上にパワフルだと確信させる。最高出力571psを謳うが、じつのところそれはオプションの大容量バッテリーの搭載が前提で、しかもローンチコントロールを使ったゼロスタート時や、電力を余計に消費するオーバーブースト使用時の短時間に限られる。通常時、ノーマルバッテリーを搭載したタイカン4Sの出力は435psで、911のピークパワーを下回るのだ。

スペック表からの予測を、タイカンはいい意味で大きく裏切る。しかし、911以上にデジタル化された室内は、キャラクターにぴったりだ。
スペック表からの予測を、タイカンはいい意味で大きく裏切る。しかし、911以上にデジタル化された室内は、キャラクターにぴったりだ。    LUC LACEY

次に、そのパワー不足を感じさせないことにもだまされる。当然ながら、パフォーマンスのデータはローンチコントロール使用時のもので、つまりは大容量バッテリー仕様でも81psを上乗せしなければ出せないタイムだ。

それでも、0−100km/h加速が4秒フラットというのは、完全にもっともらしい数字に聞こえる。ちなみに4Sは、タイカンの4WDモデルの中ではもっとも遅いバージョンだ。

なぜそのようなことになるかというと、この場合に重要なのはパワーよりトルク、具体的にいえば、モーターが回り出した途端に最大トルクへ達するトルク特性が物をいうからである。となれば、221ps/tというパワー・ウェイト・レシオが911の304ps/tに遠く及ばなくても、合法的な速度域であれば911と同等以上に速いはずだと確信できるのではないだろうか。

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