【コロナ禍と国際物流】翻弄された物流業界 「在宅」影響のキーワード 課題は?

公開 : 2021.02.16 05:45

コロナ禍が物流に与えた影響は少なくありません。コロナに翻弄された物流、これからの課題を考察します。

どのような影響が?

text:Naoki Furumoto(古本尚樹)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

昨年を振り返ると、新型コロナウイルスの影響が2020年1月後半には中国全土に広まり、それ以降、対中国向けの輸出入が激減した。

中国経済とは別に感染は世界中に広がり、世界貿易は停滞した。日本貿易振興機構(JETRO)によると2020年1~3月期の世界貿易(輸出)の合計額は8%減少したという。

国際物流
国際物流    シャッターストック

国際社会を見れば、米中対立の深刻化も企業活動や物流にダメージを与えている。サプライチェーンが機能低下し、各国経済の経済回復が予想できず、物流も含めた海外事業も停滞している。

一方、荷動きはあまりないのに、国際物流コストは総じて上昇している。航空便や運航するコンテナ船の減便。これら国際物流コスト・運賃を上昇させている。

日本に目を向けても水害の発生や、消費増税による荷動きが悪化していて、さらにコロナの影響が加わった。

「業績にマイナスの影響がある」と回答した企業の割合は「運輸・倉庫」が約90%を示しているデータもある。新型コロナによって下降し、停滞する各種経済と関連する物流は、極端にその影響を受けている。

トラック輸送量は前年実績割れであり、再び感染拡大傾向にあるから物流需要は回復には程遠い。この物流や運輸業界への影響は深刻なのだ。

物流に影響のあった分野、なかった分野

物流の減少が目立つのは鉄鋼、自動車関連、紙、衣料品などが挙げられる。

世界的な新型コロナウイルス感染拡大の影響で港湾の取扱量が減少。これを背景にドレージ貨物も減少し運賃も下落傾向が続いている。

閑散とした物流センター
閑散とした物流センター    シャッターストック

一方、在宅する人が多いので、家庭用加工食品や冷凍食品を扱う量は増加。また衛生用品、マスクや消毒用アルコールなどは多くなっている。

政府による10万円の定額給付金効果で家電の物流が一時的に動いたが、急激に下降する一過性であることが予想できる。

ただ、宅配関係では需要の拡大が見込まれる。そのため関連の宅急便を扱う企業は、増収傾向である。デリバリー事業の企業も増収しているところがある。企業間物流を扱う大手企業はその物流が減少しているので、減収傾向がみられる。

物流の基本は「人」

コロナ禍で、全体に共通しているが、物流の分野においても雇用を控える傾向が強くなっている。

また解雇や一時休業の措置も多く見られ、こうした環境の厳しさは物流を支えるマンパワーの減少に追い打ちをかけている形だ。

トラックが行きかう日本の高速道路
トラックが行きかう日本の高速道路    シャッターストック

元来この分野は「人」が基本だ。モノを保管し、動かしていくのは「人」で、国内・国際共に物流をオートメーション化することはできないのだ。

自然災害とは異なり、道路などのインフラに影響は無くても、最終的に商品や財を必要とする小売店や企業がその本来の役割を果たさないと物流も成立しないのだ。

自然災害時は都市における物流がとくに混乱する。一方、今のようなコロナ禍では地域間の問題ではなく、扱う物量そのものが減少しているので、インフラを活用したくてもできない「宝の持ち腐れ」状態になりつつある。

こういう時代の「働き方改革」はあまり意味を成していない。

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