【まもなく10年】3.11東日本大震災 交通インフラの復興と今後を考える

公開 : 2021.02.21 05:45

交通インフラと住民の関係は変化したか

現在、東北の被災地では住居などの高台への移転が進んでいる。

その一方で、低地部分にあった商業エリアのなかには、ほとんど人が戻ってこない地域もある。

東日本大震災では多くの自動車が被害を受けた
東日本大震災では多くの自動車が被害を受けた    シャッターストック

また、高台へ移転する人ばかりでなく、別の地域へ移住した人も多い。当初想定されていたコミュニティに関する計画はこの10年でも変化を余儀なくされている。

他方、交通計画や防潮堤、高台移転計画などはほぼ当初のままで進められてきた。コミュニティの変化やニーズの変化に柔軟に対応できないのが、このハード面の復興の欠点である。

先述のBRTにも短所はある。鉄道と比較すれば、地点間での移動にかかる時間が長いということ。

以前、筆者も利用したが、仮設住宅が中心市街地からかなり離れた地域に点在していたので、そこへ行く際は「長距離バス」に乗るような感覚だった。

さらに、運転手不足といった課題もある。

震災前と変わらず、自動車が不可欠な地域であるため、その利用が多く、バスや鉄道が思うほど効果を発揮していない。BRTも最近では赤字化している路線も目立ち、運行本数の減便や、路線廃止がなされた路線もある。

震災で自動車を失った人の9割近くが再購入したというデータもあり、公共交通機関のあり方が問われている。単に震災の影響のみならず、地域の特性や高齢化など社会的な課題もある。

これからの課題

人口減少・高齢化は今後も進む。広く薄く分布した街は活性化しにくい。行政コストもかかる。

コンパクトシティ構築が叫ばれるが、東北の地域環境と現状を踏まえるとそれは実行性に欠ける。富山市のように公共交通を中心とした街づくりと、多くの東北被災地域のニーズは合致しない。

BRTの駅
BRTの駅    JR東日本

先述のようにコミュニティが、当初の計画どおり集約されておらず、また、高齢者も多いなか、高台への移転は自動車の利用をむしろ加速させる。

自家用車依存から脱し、かつ災害に強い交通インフラの整備が必要だ。ハード面による防災対策はある程度されているだろう。

あとは、住民の避難経路の確保と自家用車と公共交通機関の「すみ分け」が必要なのだ。例えば、買い物や医療機関を利用する際にBRTを利用した場合の優遇措置などが挙げられる。

昨今、高齢運転者による事故も社会問題になっているため、それを防ぐことも安全な街づくりの一環だ。

安全な街づくりのための取り組みを少しずつ進展させる必要があるだろう。ここ10年での交通インフラの整備は、この先の基盤にはなるが、今後はより地域や住民の動向やニーズを考慮して進める必要がある。

そのために、これまでの10年の動きは検証されるべきなのだ。復興の区切りを明確に示す時期がきているだろう。

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