【時代に逆行?】クルマの排気量、拡大 「ライトサイジング」のねらい

公開 : 2021.02.24 05:45  更新 : 2021.02.24 11:39

大排気量モデルにも魅力やメリットは存在します。筆者は今後も大排気量モデルはなくならないと予想します。

大排気量エンジンの魅力とは?

text:Kenichi Suzuki(鈴木ケンイチ)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

地球環境への配慮という大きな流れにあわせ、クルマには「燃費性能の向上」が強く求められるようになった。

そうした流れのなかで、今なお健在なのが、大排気量エンジンを搭載する高性能車だ。

マツダは2018年にマツダ2の排気量を1.3Lから1.5Lに拡大。そのねらいは、実用燃費の向上にあったという。
マツダは2018年にマツダ2の排気量を1.3Lから1.5Lに拡大。そのねらいは、実用燃費の向上にあったという。    BMW

新しくEVを発表したポルシェでも、だからといって大排気量のエンジン車の生産をやめるわけではない。フェラーリなどは、コロナ禍であっても販売は堅調そのもの。

また、メルセデス・ベンツのAMGモデルやBMWのMモデルなどのハイパフォーマンス・グレードも普通に販売され、新型モデルも途絶えることなく発表されている。

そうしたハイパフォーマンスを謳う大排気量モデルは、日本メーカーにも数多く用意されている。

トヨタでいえばGRスープラがあるし、日産GT-RホンダNSXを販売している。また、特別なスポーツカーではなく、スカイライン400Rやシビック・タイプRなど、通常モデルの高性能グレードも用意されている。

これらのクルマは、どれも燃費よりも出力を優先しており、間違いなく燃費優先という時流に反した存在だ。

では、なぜこうした高性能車が今なお健在なのだろうか。

その第1の理由は、古くからのファンの支持が残っていることだろう。クルマの運転が好きという人間であれば、これらの高性能車の魅力は実感として理解しているはず。

そして、そうした高性能バージョンの存在が、そのベースモデルや、自動車メーカーのブランドを高める。こうした大排気量の高性能車が生き残る理由だ。

逆にいえば、それらを支持するファン層が消えてなくなれば、高性能車も同時にフェードアウトすることだろう。

また、エンジン排気量の大きさが、そのクルマの車格を表すという考えも根強い。そうした価値観の市場に車格の大きいクルマを売ろうというのであれば、当然のようにエンジンの排気量も大きなものが用意される。

排気量=車格という考えは、エンジン排気量が大きいほど税金も高くなる、という税制にも反映されているのだ。

排気量と燃費は比例するのか?

一方で、「良い燃費を求めるのであれば、より排気量が小さい方が良い」という考えもある。

実情として、クルマが小さくなるほど、エンジン排気量は小さくなって、そして燃費性能も良くなっているからだ。ただし、大きく重い車体に、ただ排気量の小さなエンジンを組み合わせれば、燃費は良くなるけれど動力性能はガタ落ちとなる。

フォルクスワーゲン・ゴルフR
フォルクスワーゲン・ゴルフR

周囲のクルマの流れに乗れないほどウスノロでは、クルマとしての商品力もガタ落ち。つまり売れなくなるため、クルマの寸法に対して、あまり極端な小排気量エンジンが採用されることはほとんどない。

しかし、それでも燃費を良くしたい。そこで生まれたアイデアが、ダウンサイジングターボだ。エンジンの排気量を小さくすることで損失を減らし、必要なときだけターボ(過給)で大パワーを生み出す。

燃費を高めつつ、走行性能も諦めないという欲張りなコンセプトである。2000年代中頃にフォルクスワーゲンから提案され、欧州ではブームのように広がっている。

しかし、日本では、ダウンサイジングターボは、あまり広がらなかった。

理由はいくつも考えられる。エンジン排気量=車格という考えが、排気量を下げることの抵抗になっただろう。ターボに不可欠なハイオクガソリンが割高なのも障壁だ。

さらにターボ機構追加のコスト増もマイナスとなる。そのため、日本ではダウンサイジングターボではなくCVTが大勢を占めた。低い走行速度で緻密にエンジン回転数を制御できるのが日本の環境にマッチしたのだ。また、コスト的にターボ化より有利というのも理由だろう。

関連テーマ

おすすめ記事