シボレー・コルベット・スティングレイ

公開 : 2014.01.17 21:00  更新 : 2017.05.29 18:36

■どんなクルマ?

7代目のシボレーコルベットには、とうとうスティングレイの名前が復活した。そう、少なくとも名前の上では……。

生産決定後にシボレーが復活を決めたこの由緒ある車名が、新型コルベットに相応しいものかを判断しなくてはならないだろう。確かにこれは素晴らしい決定だと思うし、シボレーの考えとしては、このクルマがその名を引き継ぐに値するというのだから。

2014年型の”ヴェット”(コルベットの略称)は、先代からの流用パーツがただの2つだけというまったくの新型車である。それはシャシーでもなくエンジンのことでもなく、エアコン・フィルターと脱着式ルーフのラッチだけという気の入れようである。

新設計のシャシーはアルミニウム製のバックボーン・フレーム構造の上に、複合素材のボディパネルが組み合わされている。前後ダブル・ウィッシュボーン式のサスペンションは、トレードマークである横置きリーフ・スプリングによって保持され、さらに磁性流体ダンパーを備えている。

欧州仕様のすべてのコルベットは標準でZ51パフォーマンス・パッケージが適用されるのだが、本国アメリカではこれはオプション設定となる。また、仕向け地に関わらず左ハンドルが標準仕様となっている。

心臓部には期待を裏切らないものが搭載されている。6.2ℓのエンジンは、知っている人もいるだろうがスモールブロック V8エンジンで最高出力466ps、最大トルク64.2kg-mを発し、標準仕様では駆動力が7段マニュアル・ギアボックスを介して後輪へと伝えられる。他にもオートマティック・ギアボックスと、そしてコンバーチブル仕様ももちろん用意されている。

■どんな感じ?

V8に火を入れると物憂げで独特なアイドリング音が響き、停車していてもキャビンに穏やかな振動が伝わってくる。シボレーはコクピットを表現するのに “ジェット戦闘機” という言葉を使いたがる。たしかに計器類はドライバーを取り巻くように配置されているのだが、それ以外の点でこの言葉を使うべき理由は見当たらなかった。

目に入る素材は高品質なものが使用されている。先代より改善されているのはいつものことだが、欧州の基準に照らすと相変わらず最高品質とは言えない。そのうえ、全長4.5m、全幅1.87mという大きな車体のわりに乗員用のスペースはたいした広さが確保されていないのである。

かなり大き目のラゲッジ・スペースが備わる一方、1500kg未満と発表された車重は、前後の重量配分がおおよそ等しくなっている点には注目しておきたい。

わたしの記憶にあるこれまでのモデルに比べて、肩肘を張る必要がない操作性が今回のモデルの特徴だ。エンジンのレスポンスは依然として鋭さに欠けるものの、クラッチは扱いやすくなり、ショート・ストロークのシフトは確かな動きで、ステアリングは驚くほど軽くなった。いまや電動式パワー・ステアリングは入力に素早く反応し、ステアリングホイールも小径化されてコルベットは低速域での取り回しが容易になったのだ。

走りの面でも扱いやすくなり、不要なノイズはシャットアウトされ、低回転からでもエンジンは滞りなく力を発揮する。とりわけ長距離クルージングでのヴェットは素晴らしいクルマになった。

用意されているドライビング・モードは多様で、初期設定となるエコ・モードはスロットルへの入力が最小の場合に、燃料効率改善のために4気筒を休止させることができる。

ツーリング・モードとスポーツ・モードでの走行中はエンジンの切れが高まるのだが、英国の譲り合いが必要な道路環境ではトラック・モードこそが最良だとお勧めしたい。このモードでは排気効率を高め、ステアリングの重みが増してダンパーが固められる。それにもかかわらず乗り心地が犠牲になるということは一切ないのだ。

トラック・モードに設定したら、常にフロントのオーバーハングや自分の右側に広がるボディに気をつけて運転することになる。そうすればこのC7はコントロール性に優れたシャシーでドライバーに応えてくれるだろう。

■「買い」か?

もしこの手のクルマが好みというならば “買い” かもしれない。全体的にコルベットにはポルシェ911の鋭さがなく、ジャガーF-タイプV8のカミソリを思わすスロットル・レスポンスも存在しない。しかし、コルベットにはこんな楽しみ方もあるので紹介しよう。

コルベットのリア・デファレンシャルは電子制御なのだが、少なくともわれわれのテストカーに装着されたウィンター・タイヤでは、ロックアップさせて横滑りを始めるには生半可なスロットル入力では不十分だった。そのタイヤは特に冷えた状況で優れたグリップ性能を発揮し、ノーマル・タイヤよりもハンドリングの正確さが少し劣るという程度に留まるものだった。

それにも関わらず一度リア・タイヤをブレイクさせれば、このコルベットでは制御が簡単にできるスライドに持ち込むことができるのだ。これは予想外のことではなく、価値と性能を十分に備えた、気負わずに扱えるハイパフォーマンス・クーペにぴったりの特徴だと思うのだ。

もしも新型スティングレイのパワーに不足を感じる人は、発表されたばかりの634psを謳うコルベットZ06を選ぶのが適切と思われる。

(マット・プライヤー)

シボレー・コルベット・スティングレイ

価格 £61,495(1,050万円)
最高速度 314km/h
0-96km/h加速 4.2秒
燃費 9.7km/ℓ
CO2排出量 NA
乾燥重量 1499kg
エンジン V型8気筒6161cc
最高出力 466ps/6000rpm
最大トルク 64.2kg-m/4500rpm
ギアボックス 7速マニュアル

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