【戦後のクーペ 4台乗り比べ】ランチア・アウレリア/アストン マーティンDB2/ACアシーカ/ブリストル404 中編

公開 : 2021.03.20 17:45

魅惑的なボディを持つ、英国のアストン マーティンとAC、ブリストルが、イタリアのランチアと共演。戦後の6気筒クーペを、英国編集部が同時比較しました。

BMW 328由来の1971cc直列6気筒

text:Greg Macleman(グレッグ・マクレマン)
photo:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
ブリストル404の発表は1953年。ダドリー・ホブスとジム・レーンがデザインしたボディはスリムで品の良さがある。先代モデルから460mm近く全長が短く、ずっとモダンに仕上がっている。

BMWに触発された先代までのフロントグリルは、目を引くおちょぼ口に置き換えられた。ブリストルの旅客機、タイプ167ブラバゾンから影響を受けたデザインだといわれている。

ブリストル404(1953〜1956年)
ブリストル404(1953〜1956年)

リアには、わずかにつままれたようなフィンが立ち上がる。保守的なリアエンドで、丁度いいアクセントになっている。

ブリストルがソリッドに感じる理由は、繊細に成形されたアルミニウム製のボディが、ボックスセクションの強固なシャシーに固定されているからに違いない。走行性より、丈夫さや品質を目的に採用された。

長いボンネットの内側には、BMW 328由来の1971cc直列6気筒が収まる。1947年のブリストル400に搭載されたのを皮切りに、1961年までブランドの主力ユニットとして活躍した。

より先を急ぎたい実業家なら、アグレッシブなバルブタイミングが与えられた、チューニング仕様の100Cエンジンも指定できた。最高出力はヴァンテージに匹敵する126ps。通常は106psの100Bエンジンが載っていた。

パワーで劣る通常の100Bエンジンでも、404の価格は3542ポンドと高価。100Cエンジンを指定したドライバーは限られた。それでも、繊細でエレガントな雰囲気を重視する少数のオーナーの心には響いたようだ。

今回ご登場願ったダークグリーンのブリストル404は、100Bエンジンが載る1台。貴重なスモールブーツと呼ばれる荷室の小さいボディで、2台のみが作られている。

華やかな週末も楽しめるランチア

標準のエンジンでも、その気になれば充分に威勢は良い。レブリミットめがけて回せば、中回転域の魅惑的なサウンドから高回転域の雄叫びまで、音響的にも豊かだ。

アストン マーティンDB2 ヴァンテージに匹敵するほど速くはない。しかし、ブリストルも特長の濃い6気筒エンジンと滑らかな4速MTを備え、驚くほど気持ちが良い。

ランチア・アウレリアB20 GT(1950〜1958年)
ランチア・アウレリアB20 GT(1950〜1958年)

シフトレバーのストロークは短く、トランスミッションのレシオも煮詰められてある。見事な組み合わせだと唸らされる。

2445mmと短めのホイールベースを備え、ステアリングの操舵感は正確。軽快に操縦でき、思わず運転に引き込まれる。だが、レーサーのように前かがみに積極的ではないところが良い。

ブリストル404は、数少ない熱心な顧客のために丁寧に生み出された。今でも珍しい、ニッチなクルマだ。

他方、その頃のランチアは小さなコーチビルダー的メーカーから、量産メーカーへ移行しつつあった。それを示す1台が、このアウレリアだろう。

車名は、イタリアの首都ローマとピサの町をつなぐ384kmの街道にちなんで付けられた。ランチアの上級モデルとして1950年のB10サルーンに始まり、1956年のB24コンバーチブルへ展開。その2年後に、フラミニアへと置き換わっている。

B20GTと呼ばれるオシャレな2ドアクーペが登場したのは、1952年。サルーンの上質な内容を取り入れつつ、シャープさを強めたボディへ手直しを受け、日常的な移動だけでなく華やかな週末も楽しめるモデルに仕立てられた。

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