【356や初代911をオマージュ】ポルシェ911 タルガ4S ヘリテージ・エディションへ試乗

公開 : 2021.03.16 08:25

911でも目を引くルックスのタルガ・ボディ。クラシック・レーサーの雰囲気で仕立てられた、ヘリテージ・エディションはさらに注目度の高い1台。英国編集部が評価しました。

モータースポーツの活躍を記念

text:James Attwood(ジェームス・アトウッド)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
ポルシェ911 タルガ4S ヘリテージ・エディションは、クルマの雑学王を唸らせるような限定モデルとはいえない。それでもディテールまでデザインは磨き込まれ、全体として素晴らしいルックスに仕立てられている。

このヘリテージ・エディションはポルシェのカスタムメイド部門、ポルシェ・エクスクルーシブが計画した4種類のスペシャル・エディションの1つ。1950年代から1960年代にかけての、モータースポーツでの活躍を記念した仕様となる。

ポルシェ911 タルガ4S ヘリテージ・エディション(英国仕様)
ポルシェ911 タルガ4S ヘリテージ・エディション(英国仕様)

オマージュしたのは、ポルシェ356と初代の911だという。ポルシェ・マニアなら、992型に与えられた共通点を発見しては喜ぶことだろう。

チェリーレッドのボディカラーに、ゴールドに輝くオリジナルのフォントで綴られたPORSCHEのロゴ。1963年当時のエンブレムに、ベージュでコーディネートされたインテリア。ブラックのブレーキキャリパーなど、特別感を演出する部分は数え切れない。

予定されている992台という生産台数も、ポルシェ911をより知っている人に向けられた、ささやかなメッセージのはず。食指が思わず動いてしまう読者もいると思う。

一方で、特別に仕立てられた容姿の内側にあるのは、通常のタルガ4Sと同じ。3.0Lのツインターボ水平対向6気筒エンジンは、450psと53.9kg-mを発生する。四輪駆動で、PDKと呼ばれる8速ATが標準装備となる。

ポルシェ独自のアクティブ・サスペンション・マネージメント(PASM)にトラクション・マネージメント(PTM)、トルクベクタリング(PTV)・プラス、スポーツクロノ・パッケージが装備される。

動的性能は標準のタルガ4Sと同じ

ヘリテージ・エディションに選ばれたボディが、クーペやカブリオレではなくタルガになったことに疑問を感じる読者もいるだろう。モータースポーツの歴史に焦点が当てられているのに、可動式ルーフを備えると動的性能には妥協が生じてしまう。

ポルシェ・エクスクルーシブをディレクターを務めるボリス・アペンブリンクによれば、フォールディング・トップを備えるタルガが「911で最もエモーショナルなモデルだから」と説明する。

ポルシェ911 タルガ4S ヘリテージ・エディション(英国仕様)
ポルシェ911 タルガ4S ヘリテージ・エディション(英国仕様)

筆者はもう1つの理由も推測する。タルガは、完璧なドライビング・ダイナミクスよりも、スタイルを優先するドライバーに好まれる911として売れてきた。このスタイル優先というポイントが、要因ではないかと思う。

ヘリテージ・エディションの英国価格は13万6643ポンド(2049万円)。通常のタルガ4Sより2万6918ポンド(403万円)ほど高い。だが追加料金を支払っても、追加の動的性能が得られるわけではない。

もちろん、タルガボディだからといって911の魅力が減じることはない。むしろチェリーレッドのボディにゼッケン用の丸いドアステッカー、金色に光るエンブレムなど、911に詳しくない人でもスマートフォンで写真を取りたくなる誘目性がある。

クラシカルなスタイルの価値は、オーナーや見る人が判断するもの。今回は、タルガ4S自体の魅力を探ってみよう。

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