【ブランド末期の名作】アルヴィスTC21/100 サルーンとドロップヘッド・クーペ 後編

公開 : 2021.04.04 17:45

アルヴィス3リッター・シリーズの1台、麗しいTC21/100。当時160km/hを越える性能を誇ったスポーツサルーンとドロップヘッド・クーペをご紹介しましょう。

父のアルヴィスとともに育った現オーナー

text:Martin Buckley(マーティン・バックリー)
photo:John Bradshaw(ジョン・ブラッドショー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
今回ご紹介するロイヤルブルーに塗られたアルヴィス3リッター TC21/100、通称グレイレディは、本来はプレーンなボンネットとスチールホイールで注文されていた。1990年代に5年間に及ぶ大レストアを受けている。

くすんだグリーンのTC21/100 ドロップヘッド・クーペは1974年に4番目のオーナー、レディ・コートールドの手に渡り渡米。25年間サンフランシスコで暮らし、21世紀が始まる頃にスイスへやって来た。毎年、車検のために英国へ送られていたという。

ダークブルーのアルヴィス3リッター TC21/100 スポーツサルーンとグリーンのドロップヘッド・クーペ
ダークブルーのアルヴィス3リッター TC21/100 スポーツサルーンとグリーンのドロップヘッド・クーペ

2003年、アルヴィスを専門に扱うティム・ウォーカー・レストアレーション社によって、5万ポンドを投じたレストアが施されている。その仕上がりは見事だ。

この2台の現オーナー、マーク・エルダーは父のアルヴィスとともに育ってきた。英国でクラシックカーの専門店、ザ・モーターシェッドを営んでいる。雑誌を目にする中で、古いアルヴィス12/50が一番のお気に入りだという。

エルダーは2台のTC21/100とともに、5台のビンテージ4気筒モデルを維持管理している。ハンサムながらオールドスクールなスタイリングを持つ双子の3リッター・シリーズは、フロントノーズが印象的なほど長い。トレッドは広く全高は低く、安定感がある。

バンパーのオーバーライダーに付くゴムの部分は、ジャッキポイント。1600km毎に19か所のグリスアップが必要で、整備するうえで便利だ。

長いボンネットはセンターヒンジ。開くと一般的な6気筒のように見えるが、仕上げは丁寧。プラグ交換しやすいように、サイドカバーも取り外せる。

4シーター・サルーンのトップグループ

1950年代でも珍しかったスーイサイド・ドアを開いて、TC21/100に乗る。シートの形状はフラットで、車内の雰囲気は20世紀初頭のよう。上質な素材が用いられ、快適ながら贅沢さは薄い。

ドロップヘッド・クーペのソフトトップは、フルオープンか、運転席上だけ開くクーペドゥビル・スタイルで楽しめる工夫が備わる。サルーンのリアドアを開くと、3本のアームレストの付いた肉厚なリアシートが目に入る。足元は広く、乗り降りしやすい。

アルヴィス3リッター TC21/100 ドロップヘッド・クーペ(1953-1955年)
アルヴィス3リッター TC21/100 ドロップヘッド・クーペ(1953-1955年)

リアウインドウは小さな長方形。遠隔操作でブラインドの開閉もでき、ヒーターも用意され、居心地が良い。サルーンでは、大きなスチール製のサンルーフも標準装備だった。

フロントガラスと同じくらい大きいダッシュボードは、シンプルなウオールナット・パネル。クリーム色のスイッチ類と、160km/hまで切られたスピードメーターの横に4枚の小さなメーターが並ぶ。

電動チョークが装備され、始動は一発。アイドリング時は、ほぼ無音と思えるほど静か。平らな路面なら、1速で発進する際もほとんど気を使わなくて済む柔軟性もある。低回転域の加速は、ギアに関係なく力強い。

困るほどではないものの、1速にはシンクロが備わらない。時代を感じさせる。

101psを発揮する直列6気筒エンジンの柔らかなサウンドと調子を合わせるように、トランスミッションからメカノイズが響く。160km/hの速度で風を切るサルーンとして、4シーター・サルーンのトップグループに属していた。

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