【独伊パフォーマンスセダン対決】前編 新型M3 vs アルファ&AMG 最高のドライバーズセダンを探せ

公開 : 2021.03.27 11:05  更新 : 2021.07.12 18:47

デザイン論争が先行した新型M3ですが、単独試乗ではその高性能ぶりを見せつけました。そうなると、気になるのはライバルとの力関係。同セグメントの傑作たるアルファと、格上のAMGが、ゴールデンルーキーを迎え撃ちます。

ブランドごとのキャラクター

text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
photo:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)

パフォーマンスカーを定義する要素は、なによりもそのクルマがどのような走りをみせるかだ。

ロータスであれば繊細でシンプル、そしてアナログであることがコアになる。ポルシェにも似たところはあるが、一般的によりパワフルで特異なところがみられ、手応えがずっしりしている。

パフォーマンスカーには、ブランドの個性が明確に現れる。BMW Mはシビアで精密な機械でありながら、意図的なオーバーステアを楽しめるクルマを数多く生み出してきた。
パフォーマンスカーには、ブランドの個性が明確に現れる。BMW Mはシビアで精密な機械でありながら、意図的なオーバーステアを楽しめるクルマを数多く生み出してきた。    Olgun Kordal

速いジャガーは、道に沿って漂うような乗り心地をみせる。フェラーリはダイレクトそのもの。ドライバーの足元が回るようだ。フォードの速いモデルも同じだが、そのやり方はだいぶ違う。

では、BMW Mはどうか。張り詰めていて、精密であることは、どちらも運動性のキャラクターに必須の要件だ。大きなクルマから小さなクルマまで、Mモデルはパワフルだがレスポンスに優れ、すべてがリニアだ。

もっとも速い部類のモデルならかならずしもそうではないが、一般的にある程度の出力過剰傾向がみられる。後輪駆動が大半を占めるなかで、メカニカルなトラクションのレベルを上回るパワーを求めているからだ。オーバーステアは楽しいのが一因だが、それは役に立つものでもある。いや、それこそがまさに狙いだ。

変わるメカニズムと変わらぬ精神

よくできたMモデルは、この上なくコントロールしやすい。クルマがきちんと走ってくれれば、全幅より30cmほど広いだけの間隔で置かれたパイロン2本の真ん中を、ハイスピードで駆け抜けることさえできそうなくらいだ。カウンターステアが必要になっても、ほんの数度だけ切れば済む。

結果として、最新のパフォーマンスカーとして求められるミッションに対して奇妙なほどシリアスで厳格だと感じられるかもしれない。ただし、うんざりさせられることだけは絶対にない。

近年、新たなフォーマットを積極的に取り入れているMディビジョンだが、本当に驚くべきはブランドのコアを守り育み続けてきたことだ。新型M3にもその精神は息づいているのだろうか。
近年、新たなフォーマットを積極的に取り入れているMディビジョンだが、本当に驚くべきはブランドのコアを守り育み続けてきたことだ。新型M3にもその精神は息づいているのだろうか。    Olgun Kordal

時を経るにつれ、Mモデルのサイズやメカニズムは変化し続けてきた。エンジンの排気量は拡大して縮小し、ターボ化の是非が問われたこともある。

4WDを採用したモデルも、それを踏みとどまったモデルもあった。また、コンバーティブルやワゴンが加わったり、逆に消えたりもしたし、SAVやSAC、グランクーペといった新顔も登場した。

それでも際立っているのは、MディビジョンがMモデル全体に通じる運動性の核心とフィールを、いかに保ち、また育んできたかという点だ。細かい部分はあちこち調整しても、それ以外は保たれ、あるいは洗練と改良を受け、テンプレートとリファレンスになってきた。そう考えると、なかなかの偉業だと思う。

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