【ホットクロスオーバー対決】前編 背の高いホットハッチ 広くて速い ただし価格も高い

公開 : 2021.05.08 11:05  更新 : 2021.07.12 18:48

ホットハッチ派生の300ps級クロスオーバーSUV、2台を比較します。SUV人気を考えれば必然的なラインナップは、ホットハッチにとって代われるのか、それとも妥協を強いられる選択肢に過ぎないのでしょうか。

八方美人なホットハッチ

text:Richard Lane(リチャード・レーン)
photo:Luc Lacey(リュク・レイシー)

いまどきのもっとも洗練されたホットハッチ、さもなければ、かつては存在しなかった、より完成された対抗馬のひとつ、と説明することは難しいだろうか。それこそが、今回のテストで確かめたいことだ。

ただし、クロスオーバーであることを差し引かなくてはならない。フォルクスワーゲンティグアンRも、メルセデスAMG GLB 35も、根本的な部分で、意図的かつ不可逆的な妥協をしているからだ。

車両重量とエンジンパワーでは、いずれにおいてもティグアンRのほうが優勢だ。
車両重量とエンジンパワーでは、いずれにおいてもティグアンRのほうが優勢だ。    LUC LACEY

ここでいうホットハッチとは、ゴルフRとAMG A 35だ。どちらもパフォーマンスカーとして秀逸だが、とくにゴルフRのほうは、速さだけでなく日常使いでの高い実用性も兼ね備えているという評判を、この10年ほどで確立してきた。控えめだけどエキサイティングなクルマを探すなら、真っ先に名前が挙がるだろう。

とはいえ、その優秀さは壊れやすいものだ。最新のゴルフRに195kgのウェイトを乗せ、地上高を49mm引き上げ、シートをコーラ缶1本分ほど高く設置したら、きっと台無しだろう。そこまであからさまではないにしても、ティグアンRのスペックをおおまかにいえば、そういうことになる。

GLB 35のベースはA 35で、さらに重いのだが、アプローチも似たようなものだ。車両重量はおよそ1800kgで、ティグアンRより99kg重い。どちらもわれわれの理想より重く、背が高く、幅広いが、どちらもエンジンは4気筒で、思い切り妥協したクルマだといえる。

需要を考えれば必然の存在

しかし、ホットハッチに劣る要素に触れるのはここまでだ。明らかに運動性能はベース車に劣るが、静粛性や乗り心地ではずっと有利となるだろう。そして、当然ながら、マーケットでの需要でも上回る。

GLBをはじめ、AMGはいまや10車種ものSUV系モデルをラインナップしているが、これはほかのいかなるボディタイプよりも多い。フォルクスワーゲンもまた、TロックトゥアレグにRモデルを設定しており、ティグアンRはこれらに続いて登場した。

M260型2.0L直4ターボは、最高出力306ps/5800−6100rpm、最大トルク40.8kg−m/3000−4000rpmを発生。0-100km/hは5.2秒だ。
M260型2.0L直4ターボは、最高出力306ps/5800−6100rpm、最大トルク40.8kg−m/3000−4000rpmを発生。0-100km/hは5.2秒だ。    LUC LACEY

となると、これらを正しく認識するならば、どういうクルマだといえばいいのか。まずは速い。ティグアンのほうがややパワフルで、加速性能も上だが、どちらも300psオーバーの2.0LターボとDCTを積む4WDで、0-97km/hは5秒以下だ。

どちらもキャビンには、ホールド性の高いシートやパーフォレート加工されたステアリングホイール、ピカピカの金属ペダルが備わり、乗り込んだ時点で速さを期待させるしつらえだ。

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