【Gクラスに折り畳みルーフ】ユーリエ・イントルーダー スポーツクーペxオフローダー 前編

公開 : 2021.06.06 07:05

スポーツカー風のボディを載せたGクラス。フランスのコーチビルダーが20年以上前に生み出したSUVを、英国編集部がご紹介します。

デザインにはメルセデス・ベンツの雰囲気

text:Greg Macleman(グレッグ・マクレマン)
photo:John Bradshaw(ジョン・ブラッドショー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
今回ご紹介するクルマほど、人目を引くモデルは多くない。スター俳優が目立たない格好をして、スーパーに買物へ行く気持ちがよくわかる。

ガソリンスタンドに入れば、店のスタッフもクルマで給油待ちしている子供も、熱心に視線を向けてくる。幹線道路を走れば、追いかけてきて横に並んで眺めていくドライバーにも出くわす。

ユーリエ・イントルーダー・コンセプト(1996年)
ユーリエ・イントルーダー・コンセプト(1996年)

最新のフェラーリでも、ここまであからさまに注目を集めることはないように思う。何しろ、得体が知れない。全体的にはSUVに見える。角の丸いオフローダーだが、ハードトップ・コンバーチブルでもある。

フロントグリルからすると、メルセデス・ベンツのコンセプトカー的。でも、半分あたりで、半分ハズレ。

このシルバーのクルマは、ユーリエ・イントルーダー。型には収まりきらないクルマだ。自動車の新ジャンルを開拓しようとしたが、登場は25年ほど前。地に足がつく前に、姿を消してしまった。

本物を前にしても、どのブランドの何というクルマなのか、当時の記憶がなければ推察も難しい。デザインには、間違いなくメルセデス・ベンツの雰囲気がある。いかにもなフロントグリルには、スリー・ポインテッド・スターがないけれど。

車高が高くなければ、SLKやAMG GTのようなシルエットにも感じられる。だが、滑らかな曲線を持つボディの下には、実務的なシャシーが控えている。巨大なオフロード用タイヤを履き、最低地上高は約300mm。原寸大のオモチャのようでもある。

5ターボや205 ターボ16に関わったユーリエ

今でも斬新な印象を与えるイントルーダーだが、発表は1996年のパリ自動車ショー。トランクリッドの小さなエンブレムを見ても、ピンと来る読者は多くないはず。ユーリエという名前すら、聞いたことがないという人もいるかも知れない。

ユーリエ社はフランスを拠点とするコーチビルダーで、大手自動車メーカーのコンバージョンを支援したり、シトロエンSMエスパスといった1台限りのコンセプトカーの製作を請け負ってきた。創業は1920年と、100年前にさかのぼる老舗だ。

ユーリエ・イントルーダー・コンセプト(1996年)
ユーリエ・イントルーダー・コンセプト(1996年)

創業者はアドルフ・ユーリエ。馬車の製造を中心としていたが、1925年、プジョー177Bへの関与で自動車業界に進出する。以降、リムジンやシューティングブレーク、コンバーチブルなど、少量生産のボディを手掛けるようになった。

その古い経験から、メジャーモデルの製造にも数多く関わっている。最も親密な関係にあるのはシトロエン。ヴィザにBX、XM、エグザンティアまで、1980年代から1990年代にかけてのステーションワゴンやコンバーチブルの生産を、一手に引き受けてきた。

ユーリエ社は、単なるコーチビルダー以上の実力を備えている。1980年にはルノー5ターボの製造を受注。プジョー205のボディをベースにした、ミドシップのターボ16の生産も担った。

205 ターボ16では、ボディ中央にファイアウォールを組み、エンジンルームを製作。ボディ前後にチューブラー・サブフレームを取り付け、専用のシャシーを構成している。

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