メルセデス・ベンツGLA200 CDI

公開 : 2014.02.24 23:00  更新 : 2017.05.13 12:51

■どんなクルマ?

メルセデスが送り出す新型クロスオーバー、GLA。そのエントリー・モデルはあらゆる点で関心を引くモデルである。2014年発表のモデルでわれわれが最高ランクの評価を与えたものに新型日産キャシュカイがある。その最上級グレードが、今回テストするGLAと直接競合する価格設定なのだから、われわれが注目するのも無理はないだろう。

GLAにとっての対抗馬はアウディQ3BMW X1である。しかしキャシュカイと比較した方が、このクルマの立ち位置を理解するのにずっと有効的なのである。新型車GLAはクロスオーバー・ハッチバックであり、コンパクトSUVではないのだ。最低地上高は185mmもあるが、そのシルエットとドライビング・ポジションは一般的な4×4やステーションワゴンよりもむしろ大きな5ドア・ファミリーカーと言ったものだ。

世界の他の国々では1.6ℓターボのGLA200ガソリン仕様がショールームに最初に並ぶモデルなのに、英国のメルセデス・インポーターはそのクルマの受け入れを拒否し、変わりにこのGLA200 CDIを最初に導入するようだ。グレードは “SE” と “AMGライン” が用意され、トランスミッションは6速マニュアルと7速オートマティックから選択できる。GLA200 CDIはすべてのモデルがCO2排出量119g/kmとなるが、今年後半に発売される四輪駆動の4 MATICモデルはこの限りでない。

このクルマのエンジンは、GLA220 CDIと同じ2143ccのターボディーゼルをデチューンしており、最高出力136ps、最大トルク30.6kg-mを発生する。パワートレインの構成を見ていくと、Aクラスと酷似しているのに気づく。一方で、BクラスやCLAサルーンは構成が異なっていて、こちらの “200 CDI” モデルは排気量が小さい1796ccターボディーゼルからGLAと同じ最高出力136psをひねり出しているのだ。

関連性の強いモデル間で、さらに共通したグレード同士なのだから、1つのエンジンが共用できるはずだ。それなのになぜ2つの異なるエンジンを設定したのか。この疑問をメルセデスのスポークスマンに尋ねたが、簡単には説明できないようだった。ただ、世界中のマーケットの多様なニーズに応えるには、求められるスペック条件が異なるのが一因のようだ。

今後、1.6ℓディーゼルエンジンで111psを生み出すGLA180といったモデルが用意されることはなさそうだ。メルセデスの話では、プレミアム・ブランドにそうしたコスト重視のクルマを求める需要がないとのことだ。

■どんな感じ?

優雅で、経済的で、心地よくて、楽しいクルマである。ただし、いくぶん実用性や利便性に欠けるところがある。

2.1ℓディーゼルエンジンというのはGLAにとっていい選択である。最大トルクが1.8ℓに比べてわずかに低い回転から発生するので、ピークトルクの発生回転域がより広くなっているのだ。また、このコンパクト・クロスオーバーは、ボンネット内部から伝わる騒音や振動が、他のモデルよりもずっと抑えられているのが実感できる。

エンジンはアイドリング時に少々騒がしく感じ、再始動時にはわずかに振動を伴う。しかし日常的に使う回転域では滑らかで静粛性に優れていて、荒削りなところのない回転フィールは賞賛すべきものである。

レスポンスも1.8ℓより正確で、最大トルクの発生回転域は1400rpmから始まるのだ。加速中にギアチェンジしないまま引っ張る運転をしても、パワー不足に陥ることはほとんどなく、坂道や高速道路での追い越し時にシフトダウンを強要されることもない。

マニュアル・ギアボックスは滑らかで素早いシフト操作が可能なうえ、ステアリングは手ごたえも軽く正確な操作ができる。しかし、ステアリングに伝わってくるフィードバックはほとんど感じられない。こうした特性が、ゆとりのある気軽なドライビング・フィールを生み出し、これまでテストしてきた新世代メルセデスのどんなコンパクト・カーよりも、しなやかでふところの深い乗り心地を実現しているのだ。これは高く評価されるべきことである。

“コンフォート” サスペンションはSEグレードに標準装備されるもので、起伏の多い荒れた路面でもおだやかに進むことができる。さらに、AMGラインに標準装備の “スポーツ” サスペンションは、実際に装着したテストカーで試したところ、どんなA、B、CLAクラスのモデルよりも大幅にGLAのキャビンの静粛性を向上させていた。

GLAのドライビング・ポジションはSUVの基準からすると、シートに深く身を沈める格好になるが、着座位置や視界の広さはごく一般的なものと言える。また、このクルマの特徴である低いボディによって、ハンドリングはバランスに優れて扱いやすく、欠点のないものになっている。一方で、他のどんなコンパクトSUVとも異なるのは、車内が広くトランクも大きい点であるが、その開口部は一般的なモデルよりも高い位置にある。

燃費に関してはあまりいい結果を得られなかった。山道や高速道路など多様なルートで計測した結果、われわれのテストに使ったGLA200 CDIの燃料消費率は17.7km/ℓとなった。それでもクラス内でトップを争うドラッグ係数と、120g/kmを下回るCO2排出量により、法人ユーザーに最も人気のあるBMW X1とアウディQ3に比べて、英国の現物給与税を少なくとも2ランク低く抑えることができる。

■「買い」か?

その答えは、車高の高い一般的なコンパクトSUVよりも、プレミアム・ブランドのクロスオーバーというコンセプトに魅力を感じるか否かなのである。メルセデス・GLAには必要なスペースと機能が揃っていて、さらに印象的なパフォーマンスと環境性能、それに品質の高さとブランド力が備わっていると気づけば、多くの人がこのクルマを選ぶだろう。

この際立った出来栄えのプレミアム・クロスオーバー・コンセプトには、確かに欠点はほとんどない。それにわれわれが自信を持って、今後ダイムラーが送り出す新世代コンパクト・カーのベスト・モデルと思えるほど、このクルマを好きになってしまう理由には事欠かないのだ。

(マット・ソーンダース)

メルセデス・ベンツGLA200 CDI

価格 £25,795(約438万円)
最高速度 204km/h
0-100km/h加速 10.0秒
燃費 22.2km/ℓ
CO2排出量 119g/km
乾燥重量 1505kg
エンジン 直列4気筒2143ccターボ・ディーゼル
最高出力 136ps/3400rpm
最大トルク 30.6kg-m/1400-3000rpm
ギアボックス 6速マニュアル

▶ 海外初試乗 / メルセデス・ベンツGLA45 AMG

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