【究極の二面性こそ、伝統】アルピナB7ロング・アルラット試乗 最も「意外」なアルピナ

公開 : 2021.06.08 05:45  更新 : 2021.10.09 22:27

アルピナB7ロング・アルラットに試乗。前席はスポーツセダン、後席は極上ラグジュアリー。至極の「7」を体感しました。

期待大、最強世代の「7」アルピナ

photo:Toshikazu Moriyama(森山俊一)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

どんなメーカーにもあまり期待されていないシリーズがあるものだ。

BMWでは7シリーズがそれにあたるような気がする。サイズや質感はライバルと互角で、ハイテクが詰め込まれているのだけれど、じゃあBMWらしいかと言われればそんな感じもしない。

アルピナB7ロング・アルラット
アルピナB7ロング・アルラット    森山俊一

ところがG11/G12こと現行の7シリーズは違った。

最初の試乗車は直6エンジン搭載のベーシック寄りのモデルだったのだが、カーボンで補強され、鉄とアルミ、マグネシウム等で作り込まれたシャシーは、ボディサイズに比して乗り味が軽快で、しかしすこぶる硬い。

結果的にラグジュアリーな7シリーズでありながら、3や5にも通じる機敏な走りもあわせ持っていたのである。

そして当然のように、そのアルピナ版であるB7ビターボ(前期型)も歴代最強の7として強く印象に残っている。

今回ドライブするB7ロング・アルラットはG11/12の後期型となる。

エンジンは4.4L V8ビ・ターボ・チャージング(ツインターボ)で、ZFとの共同開発による8速AT「スイッチトロニック」やアルピナ初のエアサスなどスペック的には前期型と大差ない。

だがFRだった駆動は後期型でAWD化されており、より万能感が高まっているはずだ。

B7はロングホイールベース版のみが用意されている。後席の足元スペースが140mm広くなっておりショーファードリブンにも使える仕様となっているのだ。

アルピナとショーファーというとイメージがかみ合わない気もするのだが、実際はどうなのだろうか?

大きいのに小さい、重厚なのに軽快

初対面のB7はキドニーグリルの大きさに圧倒される。

しかも「ALPINA」の文字を掲げたチンスポイラーがアゴの厚みを増すおかげで、顔の迫力はあらゆるSUVをも凌駕する。

アルピナB7ロング・アルラット
アルピナB7ロング・アルラット    森山俊一

真横から見たアルピナブルーのボディは21インチのアルピナ・クラシックホイールの精緻な印象と相まって、5.3m近い全長の割にはアスリート的な雰囲気を漂わせている。

黒いレザーと赤みがかったウッドパネルのコントラストが美しいコックピットはよく見るとシートやダッシュのみならず、室内全体が革でトリムされており、B7の格の高さを思い起こさせてくれる。

定価は2597万円だが、B7をオーダーするようなファナティックは細部まで徹底的にこだわるはずだし、実際には3000万円越えも珍しくないだろう。

走りはじめの重厚な感じから、スロットルを踏み込んでいったときのB7の加速感は独特だ。

ターボが炸裂するというより、重量感が霧散していくような感じなのである。排気音も軽く室内にこもる程度で耳ざわりがいい。

エアサスはドライバーとタイヤの間にゴムボールが挟まったような感触を示すものもあるが、B7のそれは柔らかめと硬めの2種類の金属バネがプログレッシブに機能している印象で、乗り心地の良さとリニアリティを両立している。

このクルマのために開発されたミシュランが路面を捉える様子も、ステアリング越しにつぶさに読み取ることができる。

だからボディが小さく感じられ、どんどんとペースが上がっていくのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。

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