トヨタ・アイゴ1.0 VVT-iプロトタイプ

公開 : 2014.03.18 22:50  更新 : 2017.05.29 18:48

■どんなクルマ?

新しいトヨタ・アイゴは、前作同様シトロエンプジョーとの合弁事業から生み出されたモデルである。その兄弟車はシトロエンC1およびプジョー108(前モデルは107)となる。この3車種で2005年以降200万台以上のセールスを記録しており、その協業が継続されることはその成功を踏まえれば当たり前のことだ。

この3モデルの大きな違いはそのエクステリアにある。中でも、今回の3モデルの中では、トヨタが最も特徴的なスタイルだと言える。大胆なXを象ったフロント・ビューは、シトロエンC1やプジョー108よりもアグレッシブなデザインだ。トヨタは、この特徴的なスタイリングによって、一部のユーザーを失っても構わないと考えているようだ。それよりも、その強烈なキャラクターによって得る価値のほうが大きいと見ているようだ。

3つの兄弟車が共通するエクステリアは、2枚のフロント・ドアと、スクリーンまわりだけだ。アイゴの特徴的なダブルバブル・ルーフをはじめ、その他のエクステリア・パネルは専用となっている。ボディ・スタイルは3ドアと5ドアが同時に発売される予定。

一方、そのシャシーは本質的には前作と同様のプラットフォームを使用しているものの、かなりのアップデートがされている。中でも重要なのは、捻り剛性をアップさせるために溶接スポットを119も増やしたボディである。

トヨタは、この新しいアイゴが、前モデルよりも “楽しい” ドライビングを提供できるとしている。それは、デザインだけでなく、ヒップポイントを低くしたドライビング・ポジションなども影響するようだ。ちなみにその低いドライビング・ポジションのため、ルーフは5mmほど低くなったが、ヘッドクリアランスは7mmほど増加している。

ホイールベースは前作と同じだが、全長は25mmほど長くなった3455mm、トレッドは8mmほど広くなった。若干大きくなったとはいえ、そのサイズは充分にコンパクト・シティカーの範疇に入っている。

エンジンは70psを発揮する1.0ℓの3気筒エンジンのみ。形式こそかわりないが、高効率化に向けてかなり手が入っている。アイドリング・ストップ・バージョンのCO2排出量は僅かに88g/km、通常のエンジンと5速マニュアルの組み合わせでも95g/kmだ。ちなみに、パドル・シフトを備えたロボタイズ5速マニュアルは97g/km。燃費は24.4km/ℓとなる。

■どんな感じ?

本当に快適な室内だ。われわれのテスト車両は当然発売前なのでプロトタイプであり、完璧なフィニッシュがされていたわけではないが、それでも充分に満足できる内容だった。7インチのタッチ・スクリーンを持ったモデルは、大胆な色使いが新鮮で楽しい。トヨタは、このアイゴにパーソナライゼーション・プログラムを導入する予定で、室内のプラスティックのパーツは、15分ほどで異なるカラーのものに変更できるという。同様にエクステリのパーツも、おそらくディーラーの仕事にはなるかと思うが、変更が可能だ。

しかし、AUTOCARの読者にとっては、そのドライビング・インプレッションのほうが重要な興味だろう。

簡潔に言えば、そのドライビング・フィールはかなりポジティブだ。アイゴの旧い3気筒ユニットは、高いクオリティと、機敏さをもっていたが、それはそのまま引き継がれている。しかも、それらが前モデルよりも剛性の増したボディ・シェルにマウントされる。

ステアリングは、キックバックが少なくなり、より精度が高くなった。また、5速マニュアルのよりポジティブになっている(但しオートメイテッド5速に関しては忍耐が必要だが)。とにかく、軽さからくるイージーな取り扱いが魅力のクルマだ。

テストトラックでの試乗であり、まだ完璧に仕上がっていないモデルであったので、その乗り心地については最終的な判断は避けたい。しかし、現時点でも充分に素直で、適度なグリップ・レベルと、コーナリング・パフォーマンスを見せてくれた。

ハンドリングは非常にサクサクとしており、エンスージァスティックなクルマではないにしろ、非常に機敏な動きを見せてくれた。

ちなみに、トランク容量は、従来の139ℓから168ℓまで拡大されている。しかし、リア・シートは覗いただけだが、大人が座るには厳しいサイズで、短い距離しか耐えられないであろうスペースだった。

■「買い」か?

フィアット・パンダフォルクスワーゲンUp!の方が、魅力的なクルマかもしれない。しかし、アイゴにはアイゴにしかない魅力があるのも事実だ。

実際、前モデルもPSAの他の2モデル、シトロエンC1やプジョー107よりも高い価格にも関わらず、好調なセールスを示した。トヨタのディーラーが好きな人が多いのだろう。昨年のアイゴの販売も、とても発売して9年が経ったモデルとは思えないものだった。そのアイゴが、よりファン・トゥ・ドライブになり洗練されたのである。発売後の反応が楽しみな1台である。

(マット・プライヤー)

トヨタ・アイゴ1.0 VVT-iプロトタイプ

価格 NA
最高速度 161km/h
0-100km/h加速 14.2秒
燃費 24.4km/ℓ
CO2排出量 95g/km
乾燥重量 840kg
エンジン 直列3気筒998cc
最高出力 70ps/6000rpm
最大トルク 9.7kg-m/4300rpm
ギアボックス 5速マニュアル

おすすめ記事

 
最新試乗記