【むしろSクラス以上?】メルセデス・ベンツEQS試乗 新世代の頂点を体感

公開 : 2021.08.05 05:45  更新 : 2021.10.09 23:05

今後の世界標準「MBUXハイパースクリーン」 

果たして量産仕様のEQSは、とても個性的で非常に新しさを感じさせるルックスである。

デザインの基本思想は、これまでどおり「センシュアル・ピュリティ(官能的純粋)」だが、「ワン・ボウ(ひと張りの弓)」ラインとキャブフォワードでファストバックのシルエットを持つEQSは、従来のICE車と明らかに異なる存在感を放っている。

メルセデス・ベンツEQS
メルセデス・ベンツEQS    メルセデス・ベンツ

インテリアは、まさにSクラスと呼ぶに相応しい高級感に溢れているが、インパネ全面が「MBUXハイパースクリーン」という巨大なディスプレイとなっている点がSクラスとの最大の違いだ。

オプションで選択できるこれは、ドライバー正面の12.3インチTFTディスプレイと、中央の17.7インチOLEDタッチディスプレイ、助手席正面の12.3インチOLEDタッチディスプレイを1枚のゴリラガラスで覆って一体化させたものである。

MBUXのシステム自体もAIによる高度な学習機能により、必要な機能が必要なときに表示される「ゼロレイヤー」を実現。

実際には完全にレイヤー(階層)がないわけではないが、とても直感的に使え、デジタル統合型のインフォテインメントシステムとして、抜群に使いやすいものに仕上がっていると感じた。

今後、世界の自動車メーカーやサプライヤーは、このMBUXハイパースクリーンをベンチマークにする事は間違いないだろう。

Sと変わらない? むしろ「S以上」実現?

今回は、2022年秋頃に日本市場に導入予定の後輪駆動モデル「EQS 450+」を中心に試乗したのだが、走りの上質感は新型Sクラス以上かもしれない。

加減速の滑らかさ、しっとり滑らかなステアリングフィール、しなやかな足まわりとフラットで優しい乗り心地、優れた静粛性と、何もかもが最上級ラグジュアリーサルーンに相応しいレベルにある。

筆者(竹花寿実)とメルセデス・ベンツEQS
筆者(竹花寿実)とメルセデス・ベンツEQS    メルセデス・ベンツ

とくに静粛性の高さはSクラスをこえていると感じた。

徹底的に遮音、防音が図られているのはもちろん、ドアミラーの形状を決めるためだけに200時間以上の風洞実験をおこなったというほど、ディテールを徹底的に詰めることで実現したCd値0.20という、量産車世界最高のエアロダイナミクスがもたらす風切り音の少なさは驚異的。

エンジニアは「Sクラスと変わらない」といっていたが、実際にはエンジン音もないので、まさに静寂が感じられる空間を実現していると思えた。

動力性能ももちろん非常に高い。EQS450+は、最高出力333ps、最大トルク58.0kg-mで、0-100km/h加速6.2秒、最高速度は210km/hに制限される。

その加速は、車両重量が2480kgもある事などまったく感じさせないほどパワフルで、しかもアクセルペダルの操作にリニアで唐突感がなく、とても自然だ。

ハンドリングも、全長5216mm、全幅1926mm、全高1532mm、ホイールベース3210mmと大柄なボディを意識させない軽快感と正確性を披露。

後輪が最大10°(標準仕様は4.5°)も切れるリアアクスルステアリングにより、取り回し性も良い。

後席の住人になるのも良いが、ドライバーズカーとしても十二分に楽しめるクルマに仕上がっているといっていいだろう。

しかも、107.8kWhもの大容量リチウムイオンバッテリーを搭載(充電は最大200kWに対応)し、WLTPで最大780kmもの航続距離を実現しているEQSは、BEVを所有できる環境にある人にとっては、ファーストカーとしてもまったく問題ないだろう。

メルセデス・ベンツは、ICE車で長く世界のベンチマークとされてきたが、BEVでも世界のベンチマークであり続ける事になりそうだ。

記事に関わった人々

  • 竹花寿実

    Toshimi Takehana

    1973年生まれ。自動車専門メディアの編集者やライターを経て、2010年春に渡独。現地でドイツ車とドイツの自動車社会を中心に取材、日本/中国/ドイツ語圏のメディアに寄稿。2018年夏に帰国、現在は東京を拠点に新型車や自動車業界、モビリティ全般について独自の視点で発信中。海外モーターショーの取材経験も豊富な国際派モータージャーナリスト。

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