シボレー・コルベットZ51

公開 : 2014.04.05 22:45  更新 : 2021.10.11 09:06

■どんなクルマ?

初代モデルの誕生から数えれば、すでに60年以上という歴史を持つ、伝統のアメリカン・スポーツ、シボレーコルベットがフルモデルチェンジされ、第7世代=C7へと進化した。シボレーは、アメリカ本国においては、このC7に「スティングレイ」のサブネームを復活させているが、日本では残念ながらそれは使用されない。とはいえフロントフェンダーにフィットされるエンブレムはそのまま残されるから、日本のコルベット・ファンも、まずは一安心といったところだろうか。

C7への進化は、まさに革命的なものであったと表現するほかはない。基本構造体となるアルミニウム製フレームに、こちらも「LT1」というコルベット・ファンならば特別な感情を抱くコードを復活させた、新開発の6.2ℓV型8気筒OHVエンジン。環境性能向上のために気筒休止システムを採用するなど、新世代エンジンとしての話題性は大きい。

日本仕様のC7は、クーペとコンバーチブルの両ボディーの各々に、スタンダードモデルと、Z51と呼ばれるハイパフォーマンス・パッケージを設定。コンバーチブルのスタンダードモデルを除いて、7速MTと6速ATのチョイスを可能とされている。注目されるのは、やはりZ51の存在で、V型8気筒エンジンはドライサンプ化され、最高出力&最大トルクも、スタンダードの460ps&63.6kg-mから、さらに466ps&64.2kg-mへと強化。デファレンシャルも電子制御方式となるほか、サスペンションやブレーキにも徹底した強化策が施される。エクステリアではフロント19インチ径、リア20インチ径へと、各々ワンサイズ拡大されたタイヤ&ホイールや、ビッグサイズのリアウイングなどが、Z51の特徴。スタンダードモデルでも十分に刺激的な、そして斬新な印象を抱くC7のボディーだが、Z51のスタイルはさらにアグレッシブ。ヨーロッパのスーパースポーツにも十分に対抗できるだけのアピアランスを得たと評価できそうだ。

■どんな感じ?

どうせなら、最も硬派なC7のステアリングを握るべきだろう。そう考えてチョイスした試乗車は、Z51の7速MTモデルだった。ドライバーズシートに身を沈めて、まず驚かされたのは、エクステリアと同様に、インテリアも魅力的なデザインに改められていたことだ。アルミニウムやカーボン、そしてレザーといった素材を巧みにコーディネイトして、上質に仕上げられたキャビンは、そのデザインの中に、どことなくかつてのC2の面影を感じさせる部分もある。革新と伝統が見事に表現された空間と評価してもよいだろう。

センタートンネル上に配置されるダイヤルスイッチはドライビングモードを選択するためのもので、「ウェザー」、「エコ」、「ツアー」、「スポーツ」、「トラック」の各モードを、ドライバーはチョイスできる。デフォルトとなるのはツアーで、ここからラグジュアリー&エコの方向へ、またスポーティーな方向へと、C7のキャラクターを変化させることができる。

フロントのLT1型エンジンが披露するパワーフィールは圧倒的だ。ツアーからスポーツへと、ドライビングモードを変化させると、アクセルレスポンスはさらに鋭さを増し、またエグゾーストノートも官能的なものになる。特筆すべきは、7速MTに備えられるレブマッチ機構の優秀さ。6速ATモデルではマニュアルシフトに使用するパドルを引くと、この機構のオンオフが実行され、オンの状態であればシフトダウン時に、ドライバーがどのギアへシフトしようとしているのかを判断。自動的に必要な量のブリッピング制御を行ってくれるのだ。ただし7速化されたことで、このMTは横方向では、ややそのクリアランスの小ささが気になったのは残念だった。

サスペンションやブレーキのフィーリング、そしてこのC7のために、ミシュランが専用開発したランフラットタイヤのグリップ性能も、実に素晴らしいものだった。C7への進化は、我々の想像をはるかに超えるものだったのだ。

■「買い」か?

Z51が、パフォーマンス志向の特別なC7であるとするのならば、スタンダードなC7はどのようなキャラクターだというのか。Z51の走りを体験していなければ、これもまた全前作からは画期的な進化を果たした、最新世代のスポーツカーと感じるのかもしれないが、Z51と比較してしまうと、やはりスポーツカーとしての魅力の差は大きい。とはいえこのような、グランツーリスモ的なキャラクターこそが、スポーツカーの世界におけるコルベットの独自性と考え、それを支持するカスタマーも世界には多いのは間違いないだろう。

スタンダードモデルとZ51の価格差は、日本市場においても、けして小さなものではない(クーペの7速MTで比較すると、消費税込み価格では、918万2000円と1088万2000円という差になる)。だがZ51には、この価格差を確実に超えるだけの魅力が備わっているというのが個人的な結論だ。今回は残念ながら上陸時期の関係で試乗することはできなかったが、コンバーチブルもまたクーペとは異なるキャラクターを披露してくれるのだろう。さらにアメリカ本国では、C6時代のNAからスーパーチャージドへと進化した、「Z06」も誕生。スーパースポーツの世界における最高峰を確実に意識したC7の進化は、これからもまたまだ続きそうだ。ヨーロピアン・ブランドとはテイストの異なるスーパースポーツ。C7への進化を機に、その世界を味わってみるのも悪くはない。

(text:山崎元裕 photo:花村英典)

シボレー・コルベットZ51

価格 10,822,000円
最高速度 314km/h
0-100km/h加速 4.2秒
燃費 9.7km/ℓ
CO2排出量 NA
乾燥重量 1570kg
エンジン V型8気筒6153cc
最高出力 466ps/6000rpm
最大トルク 64.2kg-m/4600rpm
ギアボックス 7速マニュアル

▶ 海外初試乗 / シボレー・コルベット・スティングレイ

記事に関わった人々

  • 山崎元裕

    Motohiro Yamazaki

    1963年生まれ。青山学院大学卒。自動車雑誌編集部を経て、モータージャーナリストとして独立。「スーパーカー大王」の異名を持つ。フツーのモータージャーナリストとして試乗記事を多く自動車雑誌、自動車ウェブ媒体に寄稿する。特にスーパーカーに関する記事は得意。

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