フォード・マスタング・マッハE GTへ試乗 486psと87.4kg-m 楽しいDNA受け継ぐ

公開 : 2021.11.03 08:25

純EVクロスオーバー、マスタング・マッハEに高性能仕様が登場。486psと87.4kg-mを獲得した四輪駆動を、英国編集部が評価しました。

合計486psのモーターに専用の足まわり

執筆:Richard Lane(リチャード・レーン)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
クロスオーバー・カテゴリーで着実に数を増やしている純EV。メルセデスAMG GT ブラックシリーズやポルシェ911 GT2を超える最大トルクを持つモデルが、選択肢に加わった。

フォードの純EVクロスオーバー、マスタング・マッハEに「GT」が登場。四輪駆動のみの設定で、フロントとリアに強力な駆動用モーターを搭載する。ただし、オプションを少し追加すると、英国価格はアウディSQ5より高くなってしまう。

フォード・マスタング・マッハE GT(欧州仕様)
フォード・マスタング・マッハE GT(欧州仕様)

マッハE GTの最高出力は486ps、最大トルクは87.4kg-mに達する。粗野にならないよう、思慮深いESPがなだめてくれる。GTならではの機能も追加されているが、乗車定員は5名のままだ。

アルミホイールは複雑なメッシュ・デザインの20インチ。タイヤは純EV専用設計のピレリPゼロが組まれる。

磁気粘性流体によるマルチモード・ダンパーと、高性能なブレンボ社製ブレーキを獲得したこともポイント。フロント側には、直径385mmの大径ディスクを備える。2198kgの車重を受け止めるために。

コーナリング時の安定性を高めるべく、タイヤのネガティブキャンバーが強められ、車高は10mm落とされている。ブラック・アウトされたフロントグリルと、フロントバンパーの下に追加されたスポイラーで、やる気に溢れたスタンスに仕上がっている。

フォードがマッハE GTへ、見た目以上の内容を与えたことは明らかだ。さらに試乗車のボディはサイバーオレンジという派手なカラーで、一層目立っていた。

サーキット走行に最適化させたモードも

格好だけではないことを示す1つが、アンテイムド・プラスと名前が付けられた専用のドライブモード。ESPの介入を控えめにしつつ、バッテリーに負荷をかけるパワーブースト機能が切られる。

野性的というモード名と反するように思えるが、このドライブモードは、サーキット走行に最適化させた設定。よりハンドリングの自由度が増す一方で、最高出力を抑えるかわりに、利用頻度の高い領域での能力が高められる。

フォード・マスタング・マッハE GT(欧州仕様)
フォード・マスタング・マッハE GT(欧州仕様)

つまり、直線加速を求めるスピード狂を相手にしているのではなく、マッハEの走りの能力を引き上げることが目指されている。クルマ好きが運転したいと思える、普段使いの純EVに仕立てることが本来の意図だ。

果たしてその仕上がりは、実際に公道を走らせてみると、良し悪しが入り交ざる。まず良い部分として、マッハE GTは速い。0-100km/h加速は3.7秒しかかからない。

背骨がシートバックに押し付けられる程ではないものの、100km/h前後までなら、フォルクスワーゲン・ゴルフRやメルセデスAMG A45を凌駕するだろう。テールを沈めながら、怒涛の勢いを味わえる。

ドライブモードに関わらず、アクセルレスポンスは鮮明。特にアンテイムド・プラスでは鋭い。デュアルモーターの能力が、最大限に引き出される。

能力の幅が広いことも魅力。高速道路を心地よく長距離移動できると同時に、カーブの続く郊外の道では、優れた姿勢制御とトラクションで、流暢に駆け抜ける。シャシーに過度な負荷を与えない限り。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事

 

フォード マスタングの人気画像