BMW M4

公開 : 2014.05.10 22:20  更新 : 2017.05.29 17:59

■どんなクルマ?

BMW M4クーペは機械要素をM3セダンと共有する兄弟車である。

長きに渡り崇められてきたM社のラインナップに新たなモデル名が追加されただけではなく、新開発の直列6気筒ターボ・エンジンを含む、今までとは大きく違う現代的なドライブラインを持っている。

詳細な技術仕様をコチラでご覧になった際にまず目にとまるのは428psの最高出力と、先代比+15kg-mとなる56kg-m/1850-5500rpmの最大トルクだろう。

軽量素材を用いることにより84kgのダイエットに成功し、乾燥重量は1497kg。40kgのM-DCTギアボックス(7速デュアル・クラッチAT)を組み合わせたテスト車両は1537kgとなる。

■どんな感じ?

M4クーペは、特に特別な技術がなくとも、とてつもないパフォーマンスを発揮できるほどの柔軟な実力と、突出した動力性能をもつ。もしかすると、ありきたりな決まり文句に聞こえたかもしれないが、まさにこのクルマにぴったりな表現なのである。

その実力を発揮するにあたって、一役買っているのがセンター・コンソールに用意されたドライブ・パフォーマンス・コントロールのスイッチである。これはドライバーが好みのセッティングに切り替えることを可能にし、具体的にはエフィシェンシー、スポーツ、スポーツ・プラスの3種類のモードでエンジン特性とサスペンション特性、電子ステアリングのマナーを変更することが可能だ。

それぞれのセッティングを自分の好みに組み合わせ、記憶させることが可能でステアリングに据えられたMボタンを押せば直ちにそれらのセッティングを呼び出せる。

まずはコンフォート・モードにスイッチしてM4を走らせてみることにする。第一級のエルゴノミクスと洗練されたインテリアは長距離移動に何の苦労も強いない。毎日の足として使用するにも充分すぎるほど快適で、435iクーペのそれと比べてもむしろもっと快適なくらいだ。

スポーツ・モードにスイッチしてみる。ドライブラインやシャシーの電子制御によるマッピングが、熱狂的なドライブを求めるあなたの意思をお見通しのようだ。ステアリングは緊張感を持ち、スロットル・レスポンスも鋭さを増す。力強さを増したかのように思えるサスペンションと、多少の冒険を許してくれるスタビリティ・コントロールは時に路上で大暴れさせてくれることにも目をつぶってくれるような、そんな味付けとなっている。

なおスポーツ・プラス・モードはさらに動作を引き締め、公道よりもサーキットでその真価を発揮してくれるだろう。

ドライビング・ポジションは非常に優秀で、新たに設計された細かく調整可能なスポーツシートのサポートも言うことなしだ。各スイッチの質感や明確さ、材質はあなたが運転する間ずっと ”特別なクルマに乗っているんだ” という気持ちにさせてくれるはずだ。

直列6気筒ツインターボ・エンジンは、長所と短所の両方を持ち合わせている。イグニッションをオンにした際はM5に搭載されるV8ターボ・エンジンとそっくりな、ディーゼル・エンジンのような奇妙なエンジンのビビリ音と耳障り排気音が聞こえてくる。幸運にも、アイドリング時に限られた音でありアクセルを踏み込めば耳にすることはなくなるけれど。

数字を見れば明らかではあるが、エンジンの特性も先代と大きく変わったところだ。アイドリングの回転数より少し上から強大なトルクが湧き出すため、結果的には街乗りも柔軟にカバーしストップ・アンド・ゴーを繰り返すようなシチュエーションでも先代より乗りやすい。

ただし、先代のような機敏なスロットル・レスポンスを期待すると少しがっかりさせられる。ターボ・エンジンゆえ、先代のNAエンジンと比較すると踏み始めから実際の加速までに僅かながらラグが生じる。ただ一旦ターボが効き始めると特に3500-5500rpmでエンジン・パワーは炸裂する。

アクセル・ペダルの踏み具合や車速に応じて、オーディオ・スピーカーを介して耳に届くエンジン音をアレンジするアクティブ・サウンド・デザインを備えているが、やはり必然的にエグゾースト・ノートそのものがNAの魅力に欠けることは避けがたい事実である。

2つの独立したターボチャージャー、可変バルブタイミング、可変カムシャフト・コントロールはエンジンをストレスなく6700rpmまで回転させることを可能にし、これは現在のターボ・エンジンと比較すると、非常に高回転型で先代のNAエンジンよりもわずか600回転だけレブ・リミットが低い。

オプションのデュアル・クラッチATは市街地の走行から高速走行まで、至極快適に、また何の苦労もしいることなく運転することを可能にしてくれる。パフォーマンスも印象的で0-100km/h加速は4.1秒、0-1kmの所要時間は22.2秒だ。両者ともに先代比-0.5秒、-0.7秒速い結果となる。

また4速時の50mph(80km/h)から75mph(12km/h)加速は先代が4.3秒であったのに対し3.5秒。最高速度はリミッター制御により250km/hとなっているが、Mドライバーズ・パッケージをオプション選択すれば280km/hまで引き上げることが可能だ。

£56,635(839万円)の価格を引き合いに出したとしても、これほど満足できる運動能力を持った車を探すことはそう簡単ではないといえるだろう。

たとえかなりの速度で走行したとしても、安定性に不安を感じることは微塵もない。電子制御されたステアリングの素晴らしさには眼を見張るものがあり、先代の油圧ステアリングと比較しても反応がダイレクトで、どの速度域でも的確な重さがある。フィードバックは若干多めだと感じるが、スポーツとスポーツ・プラス・モードにした際には不満は一掃された。

破綻をする素振りを一切みせないフロント・エンドの絶大なるグリップは終始スムーズなコーナリングを可能にする。トラクションが失われる気配をセンサーが感じ取ればクラッチ操作をし、理想とするラインを取り戻してくれるスタビリティ・クラッチ・コントロールからはタイトな2速コーナーでも多大なる恩恵を受けることが出来るのだ。

ダイナミック・スタビリティ・コントロールの介入もごく自然で、コーナリングはかなりフラットなものだ。サスペンションの設定と相まって特質するに値する仕上がりとなっている。サスペンションは従来のゴム・ブッシングを用いずに、直接ボディにボルト留めしているため限界点でのコントロール性も向上している。

カーボンファイバーと強化プラスチックを用いたドライブ・シャフトはハンドリングのレベルを引き上げ、新たな電子制御デフ・コントロールはDSCをオフにした際の華麗なるドリフトを楽しませてくれるだろう。

■「買い」か?

Mディビジョンの開発チーフ曰く、シャシー開発を行うことによってニュルブルクリンクでの走行タイムは先代よりも15秒短縮されたという。ターボ・エンジンには車重減にも貢献し、同時に明確なハンドリングまでも手に入れたのである。

絶大なる進化はその速さだけではなく高速走行時の、サスペンション追従に起因する快適性の向上にも貢献している。またDSCと組み合わされたエンジンの効率向上も目を離してはいけない重要な成長だと感じる。

サーキットに一度繰り出せば、ハンドリングはより重厚感を増し、シャシーは引き締まりボディ・コントロールはより正確になる。スロットル・レスポンスのマナーは臨戦態勢に切り替わり、解き放たれた電子制御はラップ・タイムの短縮を再優先させるのだ。

しかしながら明らかなる短所も同時にある。前モデルでは達成し得なかった壮大なパワーを兼ね備えてはいるものの、エンジンそのものは”熱狂的”という言葉とは対極に位置し、エグゾースト・ノートはしかるべき回転数になったとしても常にフラットなのである。ターボエンジンのレスポンスもまだまだ改善の余地がある。

ただしこれらのネガティブな側面は、サーキット走行から日常の使用まで高いレベルでカバーするフレキシブルな実力がカバーしてくれるだろう。

(グレッグ・ケーブル)

BMW M4

価格 £56,635(972万円)
最高速度 250km/h
0-100km/h加速 4.1秒
燃費 12.0km/ℓ
CO2排出量 194g/km
乾燥重量 1537kg
エンジン 直列6気筒2979ccターボ
最高出力 430ps/5500-7300rpm
最大トルク 56.0kg-m/1850-5500rpm
ギアボックス 7速デュアル・クラッチ

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