水素エネルギーも忘れないで トヨタ・ミライ、走るとどうなの?

公開 : 2022.01.03 20:25

EVシフトが叫ばれる今、FCV(燃料電池車)の可能性も忘れてはいけません。都内では意外に見かける2代目ミライ。試乗して、魅力を探りましょう。

充電スタンド以上に遅れる、水素インフラ

HV(ハイブリッド車)、EV(電気自動車)も随分と車種が増加してきた。

中でも二酸化炭素排出量規制の流れを背景に、EVの伸長が目覚ましい。技術要素も構成も比較的単純なので当然だろう。

トヨタ・ミライG Aパッケージ(プレシャスメタル)
トヨタ・ミライG Aパッケージ(プレシャスメタル)    神村聖

逆に普及が遅れているのがFCV(燃料電池車)だ。2014年に量産FCVの先駆として先代のミライが登場したが、2代目となる新型が登場した今でも、クラリティFCが生産を終了するなどFCVは僅かである。

FCや水素タンクなどの技術的ハードルの高さもあるが、とくにインフラ問題は深刻であり、例えば比較的充実している東京都内でも22か所しかなく、営業時間も通常のGSより短い。

高速道路のPA/SAにはない。急速充電スタンドの普及はともかくとして、家庭でも充電が可能なEVのほうが現実的に映るのは当然である。

それでも新型ミライは魅力的なモデルである。

その理由の1つは、先代のFFから変更された駆動方式。駆動モーターを後車軸直前に置くことから厳密にはMRなのだが、クラウンの基本骨格をベースにしたプラットフォームを考慮するならFRと言ったほうが理解しやすいだろう。

FCユニットやPCUなど電力系、動力系、水素タンクも一新され、同車名のFCVという共通点はあるもののハードウェア面ではまったく新しいクルマに生まれ変わった。

それらは実用性能だけでなく、ミライの走りのステータスを確実に高めていた。

どんな感じ? 進化する量産FCV

ミライのFCVシステムは、発電機をFC(燃料電池)に代えたシリーズ式ハイブリッドとすれば理解しやすい。

こういった基本構成はFCV開発実験車のトヨタFCHVから採用され、タイムラグがほとんどない加速反応のよさや自在に設定できる加減速コントロール性など、動力性能面のポテンシャルの高さはEVと同等である。

千代田区内の「ニモヒス水素ステーション九段」で充填。作業自体は数分で完了するが、本施設は営業日が平日のみで、曜日によって営業時間が異なる。なお、ミライの各部に貼られたプレートを見ると、「充填可能期限」として水素タンクの耐用年数が製造から15年であることが分かる。
千代田区内の「ニモヒス水素ステーション九段」で充填。作業自体は数分で完了するが、本施設は営業日が平日のみで、曜日によって営業時間が異なる。なお、ミライの各部に貼られたプレートを見ると、「充填可能期限」として水素タンクの耐用年数が製造から15年であることが分かる。    AUTOCAR JAPAN編集部、神村聖

先代と比較すると出力当たり負担重量は少なく、トルク当たり負担重量は増加。

タイヤ外径も含めた総減速比が低下しているので、回して加速を稼ぐタイプに思えるが、試乗した印象は違っていた。

高速加速は伸びやかになった。スペックから想像したとおりだが、低回転域が痩せたわけではない。

低回転域の力感も向上している。もっとも、いきなり全開の猛ダッシュが利くという意味ではない。

心地よさ そのワケは?

後輪駆動への変更がもたらした微妙なトルク変動の少なさも良質なパワーフィールの一助となっているのだろうが、アクセル操作に対する加減速の追従感や、加速時に必要とされる踏み込み量の少なさ、それらが生み出すゆとりが心地いいのだ。

踏み込み直後の反応と加速の立ち上がり方から目標速度への到達時間を予測し、踏み込み量の調節を行う。

トヨタ・ミライG Aパッケージ(プレシャスメタル)
トヨタ・ミライG Aパッケージ(プレシャスメタル)    神村聖

程よい反応・特性のお陰で、アクセル操作は無意識下のフィードバックループの処理をしているような感じ。しかも、一般的な運転パターンでは踏み込み量と加速反応、目標速度への到達時間の速度による変化が少ない。

モーターのトルク特性を考慮すれば、それが制御プログラムによってもたらされたのは容易に理解できる。

重要なのはその「運転特性」の味付け。

悠々としているが鈍重ではなく、力強いが乱暴ではない。洗練された味わいと車格感が高水準で両立されていた。

試乗車の車重は1920kg。クラウンのV6ハイブリッド(3.5L)車より50kgくらい重い見当。

3%弱の重量増がフットワークに与える影響は少ない。しかし、ハンドリングも乗り心地も明らかにアップグレードしている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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