絶滅、定着? 2ドアセダンからSUVまで クルマのボディ形状、統廃合の歩み

公開 : 2022.01.30 05:45

クルマを選ぶとき、ボディタイプにこだわりは? すっかり見なくなった2ドアセダン、波に乗るSUV勢。ボディ形状の変遷を追いました。

じつは馬車の時代から いまも残る形

クルマを選ぶとき、デザインや性能、価格とともに僕たちが気にするのが、セダンやSUVなどのボディタイプだろう。

このボディタイプ、クルマの進化にともなって増えていったと思っている人がいるかもしれないが、そうとも言えない。

ひと口にクルマと言ってもボディタイプは様々。トランクの有無、ドアの枚数、車高、ルーフ形状は異なるもの。写真はBMWグループのモデルたち。
ひと口にクルマと言ってもボディタイプは様々。トランクの有無、ドアの枚数、車高、ルーフ形状は異なるもの。写真はBMWグループのモデルたち。    宮澤佳久

クーペやカブリオレ、ワゴンなどはクルマが生まれる前、馬車の時代から存在していたからだ。

ゆえに初期の自動車もワイドバリエーションで、同一の車種でセダン、ワゴン、クーペ、カブリオレを用意することは珍しいことではなかった。

当時多くのクルマはフレームとボディが分かれていたので、バリエーションを作りやすかったし、現在に比べれば高価格・少量生産だったので、顧客の好みに応じて作り分ける方式が一般的でもあった。自動車メーカーはシャシーとエンジンだけを作り、ボディはコーチビルダーが担当するという分業体制も、馬車時代から受け継がれたものだ。

モノコックボディが導入され、メーカーがボディを手がけることが一般的になってからも、1つの車種で多くのバリエーションを用意することは、とりわけ大メーカーの量販車種では一般的だった。

たとえばトヨタカローラは、1966年に登場した初代の時点で、2/4ドアセダン、2ドアクーペ(カローラスプリンター)、ワゴン/バンと、現行カローラを上回る5つのボディタイプがあった。

一方世界を見渡すと同じ1960年代に、その後ポピュラーになっていく2つのボディタイプが生まれている。ハッチバックとSUVだ。

遅れてきたのに定番化 2つの選択肢

ハッチバックの元祖は、1961年デビューのルノー4と言われている。

それ以前からシトロエン2CVやBMCミニのように、小型車は2ボックススタイルが多かったが、3ボックスと同じようにリアウインドウとトランクリッドが分かれていた。しかしルノー4はセダンでありながら、ワゴンのようなリアゲートを備えたのだ。

初代トヨタ・カローラの2ドアセダン(左上)。現行型のカローラ・シリーズには存在しないボディタイプだ。
初代トヨタ・カローラの2ドアセダン(左上)。現行型のカローラ・シリーズには存在しないボディタイプだ。    トヨタ/前田惠介

一方のSUVはアメリカで、ピックアップの荷台にシェルを被せてレジャーユースに活用していたユーザーのライフスタイルを、メーカーが取り入れることで生まれた。

農業機械の生産が本業だったインターナショナル・ハーベスターのスカウト、最近本国でリバイバル版が登場したフォードブロンコあたりがパイオニアだ。

ハッチバックは1970年代に世界に広まったのに対し、SUVが世界的にブームになったのは21世紀に入ってからと時間差はあるものの、今やどちらのボディタイプも欠かせない存在。

現行カローラもセダンやワゴン(ツーリング)とともにハッチバック(スポーツ)、SUV(クロス)を用意している。

しかし新旧カローラのラインナップを比べると、あることに気づく。

初代では主流だった2ドアが、現行型ではすっかり消滅してしまっていることだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

関連テーマ

おすすめ記事