クワトロの40年 後編 隔世のメカニズム 共通性のある走り 手軽に扱える高性能こそクワトロの本質

公開 : 2022.03.05 13:26

オリジナル・クワトロと比較試乗したE−トロンGTは圧倒的に速いものの、挙動には共通性が感じられる部分もありました。そして、どちらも同時代のスーパーカー並みの性能を備えながら、GTカー的な扱いやすさの持ち主です。

先進的な機械式4WDシステム

オリジナル・クワトロの4WDシステムは機械式で、3つのデフを備える。センターとリアはロック可能で、その操作はコクピットから行える。よくできたシステムで、トランスミッション内を貫通した中空のセカンダリーシャフトが駆動力をセンターデフへ伝え、その内部にフロントデフへのアウトプットシャフトを通すことで、プロペラシャフトや重いトランスファーケースを追加せずに四輪駆動を成立させたのだ。

軽く、テンションフリーとなったことは、ラリーにおける大きなアドバンテージをもたらした。予想通り、トラクションのレベルはすばらしい。凍結した危なっかしい裏道でも、それは実感できた。

画期的だった機械式4WDと、2モーター式4WD。同じクワトロを名乗っても、メカニズムには隔世の感がある。
画期的だった機械式4WDと、2モーター式4WD。同じクワトロを名乗っても、メカニズムには隔世の感がある。    LUC LACEY

このオリジナル・クワトロは今年40歳だが、その気取りのない走りは清々しい。走る・曲がる・止まるは思いのままだが、それ以外もすべてがボーナスのようにうれしくさせてくれる。カセットデッキが奏でる、歪んだ音のデヴィッド・ボウイさえ。

E−トロンGTでは、同じことにはならない。クワトロで長距離を走るなら、カセットテープを箱いっぱいに詰めて持っていくところだが、最新モデルならスマートフォン経由で5000万曲から選び放題だ。

手軽に扱えるハイパフォーマンス

とまぁ、新旧の違いを探すばかりでは、懐古主義に陥りかねない。それよりも、2台の共通点に目を向けることにしよう。

楽に飛ばせるという点では、どちらも同様だ。首を締め上げていうことを聞かせるような必要はない。パフォーマンスカーの中には活発に感じられるが、速く走らせるにはかなり集中力が必要で、ドライバーが歯を食いしばった狂人のようになるものもある。

最新のマルチメディアを、指先ひとつで扱えるE−トロンGTのコクピットは、現行アウディらしさの最たるものだ。
最新のマルチメディアを、指先ひとつで扱えるE−トロンGTのコクピットは、現行アウディらしさの最たるものだ。    LUC LACEY

しかし、この2台のアウディの、手軽に扱える速さはそういったものではない。その意味ではどちらもGTカーで、無駄に興奮することなく日常使いできる。

ドライバーに合わせてくれるクルマ

E−トロンGTの瞬間的なトルクは、驚くほど楽にスピードを上げる助けになるが、それはクワトロでも同じ感覚を味わえる。どちらのクルマも肩をすくめるようなことはほぼなしに生活の中へ入り込めて、クルマに合わせるのではなく、クルマのほうがオーナーのしたいことに合わせてくれる。やっかいな不満はほとんど起きない。

おそらくそれこそが、時代を超えてクワトロを定義してきた要素なのだ。たしかに、アウディのパフォーマンスモデルの中には、もっと狂気じみたものもあった。思い浮かぶのは、C5世代のRS6プラスだ。しかし、根本的にはどれも妨害より支援に回ってくれるクルマだった。

E−トロンGTは速いが、扱いやすい速さだ。そして、ドライビングを楽しめる。
E−トロンGTは速いが、扱いやすい速さだ。そして、ドライビングを楽しめる。    LUC LACEY

そのうえ、乗り心地はおおむねまともだ。E−トロンGTにいたっては21インチもの大径ホイールを履きながら、タイカンにも設定されるオプションの3チャンバー式エアサスペンションのおかげで、アスファルトの上を想像したよりずっとスムースに、流れるように駆け抜ける。クワトロにはこうした先進技術は備わらないが、それでも木の板に乗せられているようなことにはならない。

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