レーシングチームとのコラボ ロータス・エラン BRM 最高傑作のベスト版 前編

公開 : 2022.04.02 07:05

グリーンの塗装にオレンジのバンパーが鮮烈

BRMでエンジニアを務めていたトニー・ラッド氏と、スペンスが導き出した計画は比較的単純。未塗装のボディをロータスから取り寄せ、英国東部、リンカンシャー州のBRMへ運び、より高出力なエンジンを搭載するというものだった。

エランはキットカーとしても販売されており、ボデイとエンジンは別々に購入することが可能。エンジンの載せ替えも、困難ではなかった。BRMのツインカム・エンジンには、132psか142psという2種類が用意された。

ロータス・エラン BRM SE(1967年/英国仕様)
ロータス・エラン BRM SE(1967年/英国仕様)

チューニングとしては安全マージンが大きく確保された内容で、記録では21基のエラン用エンジンが組まれている。しかし、実際にエラン BRMとして形になったのは、その半分程度だったと考えられている。

今回ご紹介するのは、そんな貴重なエラン BRMの1台だ。イアン・ストウ氏が所有する1968年式のタイプ36 フィックスドヘッド・クーペで、シャシー番号は006-02。当時125ポンドの追加料金が支払われた、スペシャル・エクイップメント(SE)仕様となる。

このエランが特別だということは、見た目からも明らか。フィックスドヘッド・クーペというだけで魅力的に映るし、深いラストリーン・グリーンの塗装に鮮やかなデイグロ・オレンジのバンパーが鮮烈だ。当時のF1チームのカラーリングが模してある。

初代オーナーは英国西部、ランカシャー州に住む紳士。ヒルクライムへ積極的に参加しつつ、1987年まで大切に乗っていたようだ。類まれなドライビング体験に浸っていたに違いない。

本来あるべき姿とは到底いえない状態

あえての、タフなスチールホイールを履き、ウッドパネルのダッシュボードとパワーウインドウという、豪華装備が組み合わされている。パフォーマンスとラグジュアリーとが、絶妙にミックスされていた。

惹きつけられる容姿だが、20年前の発見当時は、ヤツレきった状態だったという。「オリジナル・コンディションでしたが、激しく走り込まれてきたようです。その後、ドイツで長期間保管されていました」

ロータス・エラン BRM SE(1967年/英国仕様)
ロータス・エラン BRM SE(1967年/英国仕様)

「トランクリッドには、大事故の修復痕がありました。ボディは似た色で部分的に再塗装された状態。エンジンからはオイルが派手に漏れていて、レブカウンターは不動。ヒーターも詰まっていました」

「注目を集めるクルマでしたが、本来あるべき姿とは到底いえないものでした。ロータスへ確認を取ると、本物のエラン BRMであることが判明。過去のテスト記録や、所有権変更の書類なども残っていたんです」

「クラシックカーとして望ましい資料で、購入を決める1つになりました」。と話すストウが、このエラン BRMを手に入れたのは2010年。しばらく英国のドニントン・グランプリ・コレクションに展示されていたが、徹底的なレストアへ移された。

ボディはシャシーから分離され、表面を研磨。再塗装のためにアラン・リガルズフォード氏へ送られた。現在スペシャライズド・ペイントワーク社を営む彼は、1967年にスペンスの元で塗装を手掛けており、新車のエラン BRMも仕上げた人物だった。

驚くことに、45年前の塗料も発見。デュポン社の協力を借り、完全に一致する色が新たに調合された。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・マクレマン

    Greg Macleman

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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